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ー平和ー14

 本当に今日の和也は説得力があると言えるのだろうか。再び裕実は口を閉ざしてしまう。 「望、雄介はそういうことらしいぜ」  和也がそう言うと、望は立ち上がりリビングを出て行ってしまう。  雄介はただ俯いているだけで、望のことを追いかけようともしない。  そんな雄介に和也は一つ溜め息を吐き、 「お前、本当に変わっちまったんだな。昔のお前なら、今、望が出て行った後を追いかけてただろ? だけど、今のお前は追いかけたりしないんだな」 「……今はもう……」  それ以上の言葉を口にしようとしない雄介。 「正式にまだ別れてねぇんだぜ。それに、今ならまだ間に合うと思うけどな。別れないでいるってこと。つーかさ、お前らって恋人同士じゃないのか?」  和也は雄介に向かって説得とも説教とも取れる言葉を投げかける。 「本当、どうしちゃったんですか? 雄介さんらしくないですよー。望さんを構えないほど、そんなに勉強が忙しいですか? それとも、勉強の方が大事なんですか?」  裕実も雄介に問いかけるが、雄介は少しだけ顔を上げて、 「勉強は大事やろ? 自分の道を見つけて、みんなの夢を叶えるために、俺は今必死になって勉強しておるんやからな。俺は周りの学生と違って、知識がまだまだないんやで。周りの学生は親が医者とか、小さい頃から医者になりたかった奴らばっかりや。せやから多少の知識は持っとるようやけど、俺にはまったくない訳や。せやから、みんなに追い付いていかなあかんしな」  雄介が自分の状況を話してくれたことで、和也たちはようやく彼の現状を理解することができた。 「そういうことなら、雄介の言う通り、お前らは一旦別れた方がいいんじゃねぇのか? 今の雄介って奴は本当に望に構っている暇がねぇみたいだしよ」  和也はもう一度雄介の方へと向き直ると、 「望と別れるんなら、お前は一回、この家から出て行け! じゃねぇと、望が可哀想だからな。そして、もし望に恋人が出来たとしたら、何も言うんじゃねぇぞ! その覚悟があるんだったら、一旦、望と別れろ!」  和也の言葉は雄介に最後の確認をするためのものだった。雄介に、本当に別れる覚悟があるのか、もう一度考えさせるためのチャンスだ。  雄介は和也のその言葉に暫く考え込み、やがて立ち上がると、 「やっぱ、アカン! 和也、ありがとうな! やっぱ、アカンということが分かったわぁ。そう、俺が望から離れるのはな! それに、和也の言う通りやな……俺と別れとる間に、もし望に恋人が出来たら、俺が望に言う権利ない! っていうことだもんな」

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