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ー平和ー13
再び和也は雄介の方へと顔を向けると、
「裕実は分かったようだぜ。お前たちには、『お互いを尊重して別れる』か、『もう少し時間を作って二人の時間を少し増やすか』、それしかもうないんだよ。別に雄介が今の状況を維持していたいって思うんなら、俺たちはもう用無しだから帰ってもいいわけだしな」
キツいようでいて、和也の言葉には優しさが含まれているのがよく分かる。しっかりと望が雄介に言いたいことを代弁してくれているのだから。
「後はお前次第だ……俺は望が言いたいことを言っただけだからな」
そう言うと、和也は一気に料理を平らげ、食器を流しに運んで洗い物を始める。
和也は雄介に考える時間を与えるため、少し黙ることにしたようだった。和也はあくまで第三者であり、相談役としての立場を取っている。相談には乗るが、どちらの味方にもならない、という姿勢だろう。
和也が静かになると、リビング内に響くのは柱時計が時を刻む音だけだった。その音だけがやけに大きく感じられるほど、部屋は静まり返っていた。
「ほなら……」
そう雄介が口を開いたのは、和也が自分の皿を洗い終えた直後だっただろうか。それとほぼ同時に、皆の視線が雄介に集まる。ただ、一人だけ視線を移さない人物がいた。
それは、この話の中心人物でもある望だ。
望は何かを考えているようで、俯いたまま雄介の言葉を待っていた。
「ほなら、お互いを尊重して、一旦別れることにするわぁ。その方が、何も考えずに勉強とか仕事に打ち込めるやろ? ほんで、俺がちゃんと学校を卒業できたら、望の元にちゃんと戻るし……」
「雄介は本当にそれでいいんだな?」
和也は冷静にもう一度確認のために雄介に問いかける。だが、それを黙って見過ごすことができなかったのは裕実だった。裕実は突然椅子から立ち上がり、
「それはダメですよ! 絶対にダメです!」
裕実は理由も言わず、ただただ否定を繰り返すだけだった。しかし、それでは説得力に欠けているのは明らかだ。
「雄介がそう言ってんだ……そうしてやれよ。俺たちは二人の関係を元に戻すためにここに来たわけじゃねぇしな。俺は二人の相談を聞きに来ただけだ。肯定も否定もできない立場なんだからな」
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