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ー平和ー12
「んじゃ、二人の間に会話もないってことは、ラブラブなことも、イチャイチャすることも、雄介が望のことを抱くこともできてないってことなのか?」
「そりゃな……。会話もできてへんのに、今はそないなことができるわけがないやろ?」
「それで、望は仕事場でイライラしてたってわけだ」
その和也の言葉に、望は吹き出しそうになった。
「ったく……そ、そんなことはねぇよ」
そう否定の言葉を述べる望だが、動揺しているのが明らかで、嘘をついていることは一目瞭然だった。
和也は溜め息を吐きながら、
「ま、そういうことだな。望の性格は分かってるから言わねぇけどさ……。とりあえず……」
と、そこまで言うと、一旦言葉を切り、今度は雄介の方に顔を向ける。
「雄介……勉強が忙しいのは分かる。だけど、お前らは恋人同士だろ? たまには二人の時間を作って、イチャイチャするのもいいんじゃね? 今のままじゃ、何も状況が変わることはねぇよ」
最初は半分ふざけた調子で話していた和也だが、最後には諭すような口調になった。
「せやけど……」
雄介が言葉を発しようとするのを遮るように、和也が先に言葉を続けた。
「『忙しい』か? じゃあ、雄介はこれから望のことをどうしたいと思ってるんだ? 忙しいって言葉だけで、望のことを学校を卒業するまで放っておくのか? それなら、別れちまえばいいんじゃね? そしたらお互い気を使わなくて済むだろ?」
その和也の言葉に、さすがの裕実も黙っていられなくなったのか、声を上げた。
「和也! いくらなんでもそれは酷すぎますよ! 僕たちの目的は、今日、望さんと雄介さんのためにここに来たんですよ! それなのに、そんなこと言うのはあまりにもお二人が可哀想です!」
「俺たちがここに来た理由は確かにそうなんだけど……雄介の言葉を聞いてる限り、二人の関係はこのまま平行線のままだろうな。だから、その平行線から外れるためには、別れるのか、それとも前と変わらず恋人同士に戻るのか、どっちか選択肢を与えてやってんじゃねぇかな? って思っただけさ。今の状況を打破するには、もうこの二つしかねぇんだよ」
裕実は、和也の言葉に何も言えなくなった。和也の言っていることが正しいと分かったからであろう。今の二人には、確かにその選択肢しか残されていないのだから。
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