1758 / 2073
ー平和ー25
「……って、それどこじゃねぇんだよ!」
和也は勢いよく部屋に入ると、望の横に立ち、真剣な表情で問いかけた。
「な、望……一つだけ確認していいか?」
「何言ってんだよー。まったく、お前って奴は……何度言ったら分かるんだ!?」
「ま、まぁ……ちょっとだけ俺の話を落ち着いて聞いてくれよな。とりあえずさぁ、まさかとは思うけど、望、今日は小児病棟には行ってねぇよな?」
望は少し呆れたような顔で答える。
「俺が子供あんま好きじゃないのはお前も知ってるよな?小児病棟はよっぽどの用事がない限り行くわけねぇだろ?」
「だよなぁ。だから俺もそうだと思ったんだよ。それで急いで俺はココに戻ってきたんだけどさ……」
和也の言葉は、望にとって意味不明だった。望は首を傾げながらその話を聞いている。
「それに、悪いけど、望は子供の視線に合わせて話す奴でもねぇしな」
和也が独り言のように漏らしたその言葉に、望は苛立ち混じりに言い返す。
「つーか、それが、和也が走って戻ってきて、思いっきりドアを開けた理由と関係あんのか?」
「だから、望のことだから小児病棟なんて絶対に行かないはずなのに、俺はこの目で望が小児病棟で子供と話してる姿を見たんだよ!」
「だから、俺が小児病棟に行くはずがねぇって言ってんだろ?それに、お前と別れてから俺は真っ直ぐにここに戻ってきたしな。お前、夢でも見たんじゃねぇのか? 夢と現実を勘違いしてるとかさぁ」
望は和也の話を全く信じていない様子だった。そう言い放つと再びパソコンへと視線を戻す。
「そんなわけねぇんだけどなぁ……」
和也は小児病棟で望を見かけたという自身の記憶に自信を失い、呟く。そして何かを思い出したのか、再び望に顔を向け、少しふざけた表情で言った。
「ドッペルゲンガーだったりしてな?」
「ドッペルゲンガー!?ドッペルゲンガーってなんだ?」
「ドッペルゲンガーってのは、まぁ、もう一人の自分って言った方がいいのかな? とりあえず、自分のドッペルゲンガーを見てしまった人は死が近いって言われてるんだけどよ」
ともだちにシェアしよう!