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ー平和ー90

 雄介は途中で朔望たちと別れると、望がいる病室へと向かう。  病院内は消灯時間が近いためか、廊下には人の通りはなく、ひっそりとしていて、雄介が歩く音だけが廊下に響き渡っている。  雄介はナースステーションの前を通ると、一応、看護師に声をかけ、望がいる病室を目指す。  そして雄介は望の病室の前まで来ると、ドアをそっと開け、 「望、起きてるか?」 「やっと、終わったんだな」 「まぁな」  雄介は部屋の中に入ると、ゆっくりと椅子へと腰を下ろす。 「スマンな、置いて行ってもうて……」 「気にすんなって……なんとなくだけど、お前が行けば、裕実たちが助かると思ったからな」 「……って、それって、どういう意味やねんなぁ」  雄介は軽く笑いながら望に突っ込むと、望も雄介がふざけているのが分かったのか軽く笑う。  だが、軽く笑っただけでも犯人に撃たれた傷に響いてしまったのか、望は顔を痛みで歪ませてしまったようだ。  そんな様子の望に雄介は慌てたように、 「スマン! スマン! 望は足怪我しとったんやもんなぁ。今日はもう無理せんと寝て……」 「いや……逆なんだよな。寝たいんだけど、痛くて寝れねぇってのが本音だからな」 「そうなん? 鎮痛剤は打ってもらったんか?」 「まぁ、一応はな。でも、まだ、若干は痛いんだよ」  雄介はどうしたらいいのか分からずに目を宙に浮かせていると、 「雄介も今日は大変だったんだろ? 今日はもういいから、帰って寝てろよ」 「せやけどなぁ、望のことが心配やし」 「俺の方は致命傷じゃねぇし、死ぬことは絶対にないから大丈夫だしよ」 「んー……ほなら、一緒に寝てええ? 明日になったら、直ぐに家に帰って学校に行くしな」  望は今まで突っ張っていたのだが、雄介のその言葉に軽く微笑むと、 「分かった……お前がそうしたいんなら、それでも構わない」 「ほなら、とりあえず、明日までは一緒やな」  望は今度、安心したような笑みを浮かべると、雄介のことを見上げる。  そんな望に気づいた雄介は一瞬首を傾げたのだが、望が言いたいことが分かったのか立ち上がると、望の体を抱きしめるのだった。

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