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ー平和ー96

「ねぇ、そうでしょー。 だから、兄さんが雄介さんと付き合っていることにも反対はしなかった訳だし。 だから、兄さんが父さんを恨む理由が分からないんだよねぇ。 って言ってんだけどー! っていうか、兄さんが一方的に父さんのことを嫌ってるって言うの? 兄さんの事をほっぽといたから? それは兄さんが日本に残るって言って聞かなかっただけだしー、そこだって、寧ろ、父さんは兄さんの意志を尊重して兄さんを日本に残しただけだしね。 こんなに恵まれた環境に居るのに、不満を父さんに言えるっていうのが凄いよー。 しかも、お金も十分に与えられて、本当は医者という仕事は過酷な労働の筈なのに、兄さんは時間は十分に取れる筈なのにね。 アメリカではねー、お金が無い家では救急車にだって乗せてもらえないんだよー。 要は日本と違って有料だし、だから、助けられない命も沢山ある。 だからさぁ、もう、父さんのこと許してやったらどう? っていうのも変なんだけど、ただ兄さんが勝手に父さんのことを恨んでいるみたいだけどね」  望は今、朔望が言っていた言葉が真実なのだろうと思っていながらも、素直に首を縦に振る性格でもない。 「知ってる……。 こんなに言っても兄さんが首を縦に振らない性格だっていうこともね」 「だったら、言うんじゃねぇよ」 「なら、父さんの真意も分かった訳だしさ、これからは、父さんに反発しないように努力したらいいんじゃない?」 「それ位なら出来るかもしれねぇな」 「なら、それでいいでしょ?」 「あ、ああ、まぁな……」  朔望は今度、和也の方に向き直り、 「じゃあ、和也は兄さんのこと見ててね。 もし、父さんが兄さんのとこに来た時に兄さんが父さんに反発しないように見守ってくれると嬉しいなぁ。 どうせ、和也は兄さんから離れる気はなさそうだしね」 「そうだな。 分かったよ。 俺には親父がいないから、やっぱり、親子って仲がいいのが一番だしな」  望は二人の言葉に溜め息を漏らす。 「んじゃ、僕達は仕事があるから」 「また、後でな……」  二人はそう言うと、望の病室を出て行くのだ。

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