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ー希望ー6

 だって、そうだろう。 確かに望は真面目な性格ではあるのだが、今まで和也は望と一緒に仕事をしていて、誰かに怒ったこともなければ、雄介にも怒ったことがないのだから。 「とりあえずさぁ、今はそこまでにしとけよ。 今は休憩の時間だし、仕事の時間じゃないんだから……ゆっくりと休んでから午後からの仕事に備える場だろ?」  そう和也はフォローを入れたつもりだったのだが、どうやら更に望の逆鱗に触れたらしく、和也の方へと顔を向けると、腰に手を当て、 「お前もお前だよ! ここはゆっくりする場だぁ!? お前みたいなお気楽な奴に言われたかねぇんだよ。 こっちはまだまだ忙しいんだ! だから、休み時間を割いてやらなきゃいけないことをやってるんだぞ!」  流石の和也も望の言葉にイラッときたのか、和也も立ち上がると、 「あのさぁ、さっきっから忙しいって言ってるけどさ。 ただそれって、忙しすぎて、そのイライラを俺達にぶつけてるだけじゃねぇの? もし、そうなら、勘弁してくれよ! それで、イライラしてんなら、理不尽過ぎるからな!」  和也のその言葉に、少し躊躇している望。 「黙るってことはそういうことだろ? 望って、そういうところあるからなぁ」  和也は溜め息を吐くと、椅子へと腰を下ろす。  そこへ再び雄介は和也に小さな声で声を掛け、 「流石、和也やなぁ、望のことを黙らせるなんてさ……」 「まぁ、周りの視線が気になったからな。 それに、お前等の仲を悪くさせたくなかったしよ。 あのままじゃ、家に帰っても気まずいだろ?」 「ん……まぁ、そうやろうけど……。 ま、俺が思うに望は仕事とプライベートのことをちゃんと分けてくれると思うで……。 仕事には真面目やから俺達に叱ってくれてるんやろうし、こうプライベートの時はきっと仕事のことは出さんと思うしな」 「でも、それはまだ分からねぇだろ?」 「まぁ、そうやねんけどな……ま、そんでも、俺は望んこと信じとるから」  その雄介の自信あり気な言い方に、和也は軽く微笑むと、 「そっか……じゃあ、俺の力は要らなかったって訳だな」

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