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ー信頼ー3
そんな二人の会話に割って入ってきたのは雄介だった。
「それは違うって! 逆に、逆なんやってな?」
と、雄介は望に話を振ったはずだったが、そこに割って入ってきたのは和也だ。
「……逆って!?」
「あ……ってな……あー」
和也の問いに、雄介は視線を天井へ向け、
「あの……そのな……この一週間、逆に俺等っていうのはイチャイチャな事もしてなかったって訳やろ? せやから、今さっきの和也の言葉で望は思い出したんやろな? 俺と恋人同士やって事をな……それで、顔を赤くしたんと違うんかな?」
「何だ、そういう事だったのか」
そう言いながら、雄介は作った料理をテーブルに並べていく。
「お前等と違って、俺等の方は診療所から離れらんないし、望の方もこの診療所の事で頭がいっぱいいっぱいで、今、俺の事なんか全く眼中になかった。せやから、ここに来てからの望っていうのは、そういう事を一度も考えた事、無かったんやろなーって思うてなぁ?」
その雄介の言葉に、望は雄介を見上げる。
そんな望の視線に気付いたのか、雄介は望に向き直り、
「……へ? 何!?」
「あ、いや……今、雄介が言ってた事、当たってるなーって思ってな」
「へー、そういう事だったんだ。って、雄介! すげぇじゃん! よく望が思ってた事分かったなっ!」
「まぁ、もう望とは何年も一緒に居るしな……それに、好きな相手だから余計になのかもしれへんなぁ」
「まぁ、それと、学校で心理学も学んできてる訳だし、更に望の事が分かるようになってきたって事か」
「まぁ、そういう事やんな。ま、とりあえず、ご飯出来たし食べようや」
「ああ、そうだな。いただきます!」
和也は手を合わせた後、雄介に視線を向け、
「ってさぁ、雄介ってここに来てから急に顔つきとかっていうのが変わったようにも思えるんだけどな?」
その言葉に、聞き手に回っていた裕実が声を上げる。
「そうなんですよっ! 和也の言う通りなんですよね! 顔付きが変わったっていうのか……雰囲気が変わったっていうのか? そこは良くは分からないんですが、何かこう前とは違う雰囲気になったっていうんですかね?」
「逆にちゃんとした医者になってきたっていうんじゃねぇのか? 今は前の病院時代とは違って、雄介一人で色々とこなして行かなければならない訳だし。一応、俺は雄介のフォローをするつもりではいるんだけど、もし、俺もフォロー出来ない状態だったら、一人でやっていかなきゃならない訳だしさ。そんな事が起きたなら、ミスなんかしてる場合じゃねぇしな……だから、ふざけたような顔じゃなく、真面目な顔つきになったって事だろ?」
「まぁ、そういう事だよな」
「とりあえず、俺達の方はお前等と違って、ゆっくりしているようで、ずっと気は張ってるんだからな。暇であって暇では無いって訳だ」
「スイマセンでしたー。俺達ばっか遊んでるみたいで……。でも、俺達だって遊んでいるようで、散歩しながらも島の中を探検しているようなもんなんだぜ。ここにはまだ来たばっかりだから、地形とか雰囲気とか、住民達がどういう暮らしをしてるんだろ? とかって、一応は見ながら探索しているんだからな」
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