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ー信頼ー38
「……へ? それって、どういうことだ?」
望は裕実に視線を合わせる。裕実も望の視線を受け止めると、一度笑顔を見せたが、すぐに呆れたような表情を浮かべ、こう続けた。
「和也が何にお金を使っているのかは分かりませんが、給料日の一週間前になるといつも『お金がピンチ』って言ってますよ。だから、和也の場合には本当に『今を生きる』ってことを実行しているみたいですよね。それが良いのか悪いのかは分かりませんけどね」
裕実の言葉に、望は吹き出しそうになるのをこらえながら答えた。
「まぁ、確かにアイツらしいよな。でも、それも『今を生きる』ってことをちゃんと実行してる証拠とも言えるよなぁ」
「そうですよね。和也ってあんな感じですが、根は真面目なんだなって思います」
望は裕実に笑顔を見せると、言った。
「そろそろ出るか? アイツらのことだから、長湯してたら心配するだろうしさ」
「そうですね。和也なんかは本当に心配しそうですからね」
二人は風呂から上がり、脱衣所で着替えをしていると、ドアの前あたりで何かが走る音が聞こえてきた。
「……って、まさか、アイツら、俺たちの会話を聞いてたんじゃねぇだろうな?」
今日の望と裕実の話題は、二人だけの秘密めいた内容だった。雄介と和也には聞かれたくない話であるだけに、もしも聞かれていたと思うと、望の心にはムカつきが湧き上がってくる。望は着替えを終えると怒ったような表情を浮かべ、リビングへ向かった。そして、ソファに座っている和也たちの後ろに立つと、仁王立ちで問い詰めた。
「お前らなぁ、俺たちの会話をずっと聞いてただろ?」
「はぁ!? 聞いてねぇよ。寧ろ、俺たちはずっとここでテレビ見てたんだしよー。なぁ、雄介」
「せやせや、俺たちはずっとここでテレビ見ておったで……」
雄介が素直に答えたが、それでも望は信じていない様子で、目を鋭く細めながら問い詰めた。
「なら、どこから聞いてたんだ?」
「だから、聞いてねぇって……」
「じゃあ、なんで俺たちがお風呂から出てきて脱衣所で着替えをしてるときに、廊下を走る音が聞こえたんだ? それは俺の気のせいだっていうことなのか?」
「つーか、そのときっていうのは、きっと俺がちょうどトイレに行ってたときなんじゃねぇのかな? トイレって風呂場の隣りにあんだろ? だからさ、望はそれを聞いて勘違いしたんじゃねぇのかな?」
「……へ?」
和也の言葉に、望は声を裏返した。
「確かに、俺はトイレに行った後にテレビ番組が気になってたから、走って部屋に戻ってきたからな」
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