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ー信頼ー37

「そっか……そういうことだったんだな」  望はそう答えると、遠い目をするように天井を見上げた。 「とりあえず、俺は雄介のことを好きになって良かったと思ってるよ。確かに、前に女性と付き合ったことがあって、それからフラれてからは恋愛に対して完全にトラウマになってたけど……なんだろうな?雄介といると安心もするし、すっげぇ楽しくも感じてるんだよなぁ。まぁ、たまに喧嘩とかしたりするけどさ。雄介っていう人物は、俺に『恋人といるだけで幸せになれるんだ』ってことを教えてくれた人物なんだよ」 「そうなんですね。確かに、望さんは雄介さんといる時って本当に幸せそうですもんね。僕の方も、もちろん和也といるだけで幸せな気分になるっていうのを教えてもらいましたし、今も和也といると幸せな気分になれますからー」 「それなら良かったじゃねぇか。過去はどうあれ、今は幸せなんだろ?」 「望さんって……よく、お婆さまに育ててもらったっていう話をしますよね?ということは望さんって、小さい頃はお父様とお母様にあまり会えてなかったってことなんですか?」 「ああ、まぁな。前に朔望が言ってただろ?『俺はどうしても親父たちとアメリカには行かない』って……まぁ、俺がどうしてそんなことを言ったのかは分からないんだけどさ。朔望も言ってたけど、子供ながらにこう思ったのかもな。『一緒にいても親父もお袋も仕事で家にいないのだから寂しい思いをするだけ』だってな。子供の頃って、家に帰ってきて、お母さんとお父さんが家にいないのは寂しいもんだろ?」 「あ、スイマセン……あの……そこは僕には分からないところなんですけど……」 「あ!ゴメン……そうだったな。でも、母親はいい人だったんだろ?」 「あ、はい……そうだったんだと思いますよ。でも、物心ついた時には死んでしまっていたのか、父親に嫌気がさして出て行ってしまったのか分かりませんが、既に母親の姿は家になかったんですよね」  その裕実の言葉に、望は申し訳なさそうに言葉を返した。 「あ、マジ……ゴメン……。やっぱり、人の過去のことについて追求するもんじゃねぇんだな。やっぱ、聞いちゃいけない過去だってあるんだからさ」 「別に気にしないでください。今の僕っていうのは、和也に見習って今を生きてる人間になってきたんでね。過去は過去なんで、過去を振り返らず未来に向かって今を生きていくのが大事なんだって和也に教えてもらったのでね。今の僕は未来を作るために今を生きていこうと思ってますよ。まぁ、和也の場合には未来のことは本当に全然考えてないかなぁ?って思う時もありますけど」

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