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ー信頼ー36

「まぁ、確かにアイツは腹黒いところは全面に出してきてるって感じはするんだけどさぁ、内面は優しいのかもな。じゃなきゃ看護師っていう仕事は務まらないだろうし、いつもアイツ、患者さんのことは気を使ってるみたいだしな」 「ですよねー。僕もそれは思います」 「後は、仕事は仕事でちゃんとやるしなー。仕事の時っていうのは本当に一切、プライベートのことは口にしないしさ」 「確かにそうですよねー。仕事中に和也に手を出されたことはないですし、休憩中にも、あんまり手を出された記憶はないような気がします。休憩中にたまに会う時はありますけど、その時でもイチャイチャする程度で……まぁ、それ以上のことは絶対にしてきませんでしたからね」 「へぇ、そうなんだなー。そこはちょっと意外だったかもー。あの和也の性格からしてみたら、人前でも堂々とイチャイチャするんだと思ってたわぁ」 「まぁ、あくまで春坂病院内で、でしたけどね。でも、外でも肩に腕を回してくる程度で、明らかなボディタッチみたいなのはなかったような気がします」 「和也の場合、そういうところはわりときっちりしてたんだな。常識を弁えているっていうのか……まぁ、普段が普段だから、そう取られちまっても仕方がないってことか……」 「まぁ、そういうことですよね」 「そうだな。まぁ、雄介も外では手を出してくるってことはあんまないけどな」 「そこは、望さんが雄介さんに向かって『手を出すな』っていうオーラを出しているからだと思いますよ」 「……へ?」  その何気ない裕実の言葉に、望は目を丸くしながら裕実のことを見つめる。 「もしかして、気付いてなかったんですか?望さんって、外では雄介さんに向かってそういうオーラみたいなのを出しているんですよ。後は僕たちの前でもね。だから、雄介さんは望さんに手を出すことができないだけなんじゃないんでしょうか?多分、それを感じてからは、外で望さんに向かって手を出すことはなくなったのかと思いますよ」 「ああ、まぁ、確かに……最初のうちはそんなオーラみたいなのを出していたのかもしれねぇな……ま、今はもうそんなオーラは出してないように思えるんだけどなぁ」 「それは、雄介さんが外では望さんに手を出さないっていうことが分かったからじゃないんでしょうか?」  そう言う裕実に、望はまた小さな溜め息を漏らす。  確かに裕実の言う通りなのかもしれない。  本当に裕実という人間には驚かされる。いつも大人しそうなイメージはあるのだが、きっと心の中では色々と分析をしているのだろう。しかし、その分析能力が当たってしまうのだから、怖いくらいなのだ。

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