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ー信頼ー35
「それって、もしかして疑心暗鬼になってるってことなんじゃないんでしょうか?」 「……疑心暗鬼!?」
望は裕実の言葉に目を見開き、裕実の方へと体を乗り出す。
「そうですよ! 望さんは和也が何か企んでいるんじゃないかって疑っているようですが、僕は和也のことを信じます! 何も企んでいないっていうことをね」
「ってことは、俺は和也の行動を疑っているけど、お前は和也の行動を信じるってことか?」
「そういうことです!」
そうハッキリと自信を持って言う裕実に、望は軽く息を吐くと、今度は裕実の方に顔を向ける。
「そうだな……今のは俺が悪かった。 ホント、恋人のことを信じられなくなったらおしまいだよな」
「そんなことはないですよー。 信じられなくても相手のことを好きでいられるなら、それだって立派な恋人なんですからね」
「ま、確かにそこは裕実の言う通りかもしれんな」
何だか望より裕実の方が歳下なのにも関わらず、今は望よりも裕実の方が大人に感じる。
「望さんって……雄介さんのことを意識し始めたのはいつからなんですか?」
唐突な裕実からの質問に、望は再び目を見開き、
「……って、いきなりなんなんだよ……」
そのいきなりな裕実からの質問に、望は体を元の位置に戻し、視線を完全に裕実から逸らしてしまった。
きっと、唐突な質問に顔を赤くさせてしまったからだろう。
そんな望に気づいてなのか、それとも気づいていないのか、裕実の方は、
「あ、いや……ただ何となく聞いてみたくなりましてね。 こうやって、望さんと二人きりで話せる機会って逆にあんまりないじゃないですか? だから、聞いてみようって思いましてね」
そう無邪気な笑顔で言ってくる裕実。
ホント、そんな無邪気に言われたら、答えないわけにはいかないような気持ちにされてしまう。 もしかしたら裕実という人間は元からそういうところがあるのかもしれない。 そう、和也とは違って、全く腹黒さや下心がないからこそ、警戒することなく答えてしまうのだろう。 いや、和也とは違って純粋な心で聞いてくるから、答える方も素直になってしまうのかもしれない。
望は軽く息を吐くと、
「実は……そこ、俺にも分からないんだよな。 雄介とは『ただ付き合ってみようかな?』って思っただけだしさ……でも、気づいたら、本当に俺の方が雄介のことを好きになってたんだけどさ……」
「そうだったんですか?」
「そうだったんだよ。 そういう裕実はどうだったんだ?」
「んー……そうですねー。 確かに、最初は僕、雄介さんの方が好みだったんですよ。 ですが、雄介さんには望さんがいたので、雄介さんのことはスッパリと諦めることができたんですよ。 そこから、一緒に働いている時の和也さんを見て、和也さんは優しいってことに気づいて、それから、ですね……和也のことを意識し始めたのは……」
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