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ー信頼ー92

 望は裕実にそう言われ、やっと昨日の話し合いの内容を思い出したのだろう。すぐに納得はしたものの、雄介がキッチンに立っていない状況に少し戸惑っているようにも見える。普段なら雄介がキッチンにいることで、自然とキッチンテーブルに座るという行動が決まる。だが今日は、キッチンにいるのは和也だ。そのため、テーブルに座るべきか、それともソファに座るべきかで迷っている様子だった。おそらく、望の素直じゃない性格が邪魔をしているのだろう。もっと素直な性格なら、きっと迷うことなく雄介のいるソファに座るはずだ。  悩んだ末、望はいつものテーブル席を選んだようだ。 「雄介ー、飯、出来たぜ」 「ああ」  雄介は和也の声に応え、いつものように望の隣へと腰を下ろした。  手を合わせながら、 「いただきます」  と一言。それから食べ始めた。 「んー、美味いわぁー。いつも自分で作ってたから、たまには他人が作ってくれたご飯っていうのもええもんやんなぁ」 「まぁ、相変わらず手の込んだ料理は作れないんだけどさ。作らないよりはマシかなって思っただけだからよ」 「料理ってな、上手い下手やないような気がすんねんな。相手のために作るってことが大事なんやと思うで。俺はいつもそう思いながら作ってるしな」 「まぁ、確かにそうだよな。雄介ってたまにはいいこと言うんだな」 「もう! 和也ったら、そんな言い方だと雄介さんに失礼ですよ。『たまに』じゃなくて、雄介さんはいつもいいことを言う人なんですからね」 「んー、まぁ、確かにな。なんか急に成長したっていうのかな? 流石にもう体の方じゃねぇよ。なんていうか……精神的にとか人間的にっていうのかな?」 「それはきっと、医者という職業に自信がついてきたからなんじゃないんでしょうか?」 「多分、そうなんだろうなー。今は一人前の医者になれたってわけだしな」 「本当に凄いですよね。雄介さんが努力して医者になってくれたおかげで、今はこうしてみんなで夢を実現することができたんですからね」

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