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ー信頼ー95

 そう雄介は独り言を漏らすと、まだ家のリビングにいるであろう裕実と和也の元へ急ぐ。 「ちょ、和也達ー! ゆっくりしてる場合じゃないで!」  慌てながら言ってくる雄介に、雄介が何を言いたいのかが分からず、和也達は雄介のことを見上げる。 「どうしたんだよー。そんなに息まで切らしてさぁ。何かあったのか?」 「いやいやいやいや……これが慌てずにいられるかっちゅうねん! とりあえず、ホンマに急いでって!」 「ってかさ、さっきから何を言ってるのか? っていうのが意味分からねぇんだけど……。だから、何でそんなに急がなきゃなんねぇんだ?」 「あー、だからやなぁ?」  雄介はそこでやっと息を整えると、 「今まで診療所の方に患者さんがあんまり来てなかったのに、今日は数人くらい来てるんやって? せやから、急いで受付しないとアカンやろって!」 「……へ? 患者さん?」  その和也の言葉に、雄介は頭を二回ほど頷かせる。  和也と裕実は一瞬視線を合わせ、目をパチクリとさせる。 「それなら、急がねぇとじゃねぇ!」  和也が今の時間を確認すると、既に八時半を回っていた。 「やっべーじゃん! 診療所が開く時間っていうのは九時だろ? 流石に初めて来た患者さんを待たせる訳にはいかないしさぁ。裕実! 急いで着替えて行くぞ!」 「はい!」  そして二人は着替えると急いで診療所の方へ向かう。  島の診療所を開いて約二週間。今まで誰一人として診療所に来る人は全然いなかったが、やっと診療所に患者さんを迎えることができたようだ。  流石にまだ沢山ではないのだが、来てくれた患者さん達には望も雄介も丁寧に診察し、島の人達に好印象を与えることができただろう。  四人は昼休みになると家の方に戻ってくる。 「とりあえず、今日は俺達が飯作るな」  そう言うと和也はキッチンへ立つ。  雄介はテーブルに着くと息を吐きながら、机の上へとウッと潰れる。 「今日、久々に患者さんのことを診たからめちゃくちゃ緊張したわぁ」 「まぁ、それに初めての人だったから余計になのかもしれねぇよな」 「そうなのかもしれへんよね。 それに、初めて来てくれたんやから、診療所はいい所だって思わせなきゃならんかったしな。ほら、印象とかが悪かったら、二度と来てくれないようになってまうんやろうしー」

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