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ー信頼ー112
「……そう。なら、何でそこは自信持って言えないのかなぁ? 和也さんには自信があっても、兄さんがどう思ってるのか分からないってことになるんじゃないのかな?」
朔望の言葉に和也は言い返せなくなり、黙り込んでしまった。人間、口喧嘩になれば、言い返せなくなった方が負け。朔望の言葉には妙に説得力があって、和也は完全に押されていた。
「まぁ、そういうことだよね……」
その場の空気が少し重くなった中、今まで黙っていた望が小さな声で言葉を発した。
「……そんなわけねぇだろ」
小さく呟いた望だったが、急に立ち上がり、声を張り上げた。
「そんなわけがねぇって言ってんだよ! さっきから聞いてれば、お前はずっとアメリカにいたから分からないのかもしれねぇけど、言葉で伝わらなくても、目や心で親友のことが分かり合える関係だってあるんだ! それだって、親友だって言えるんじゃねぇのか?」
「だってさぁ、それなら良かったんじゃないのー?」
「良かったんじゃねぇよ。今まで散々知ったような口聞きやがって……お前こそ、望のことなんか一つも分かってねぇんじゃねぇのかよ!」
「だって、それは仕方ないじゃなーい! 僕が兄さんと一緒にいたのは小さい頃と、アメリカから帰国してからの二年だけなんだからね。それに、兄さんと話したって、ほんの少しでしょ? それだけで兄さんのことが分かる方がすごいと思うよ」
朔望の言い方に和也はため息を漏らした。確かに、朔望の言い分には正当性もある。しかし、その口ぶりがどこか歩夢を思わせるのだった。やっぱり兄弟というものは、似てしまうものなのかもしれない。
「皆さん、もう寝る準備をされているみたいですし、僕たちも準備しましょうか?」
「そうだな。今日は家じゃないし、みんなに合わせないとな」
そう言って、和也と裕実は行動を開始した。そして毛布を手に戻ると、それを望に手渡した。
「とりあえず、望の分な……」
「……で、僕たちの分は?」
「お前は普通に動けるんだから、自分で取ってこいよ」
「僕だって、今日はたくさん泳いできたんだから、普通の体力じゃないんだけど……」
「それでも今まで動いてたんだから動けるだろ? 患者さんじゃねぇんだから甘えるんじゃねぇよ。それに、俺と朔望の仲なんて兄弟でも親友でもないし、あー、友達っていう仲でもないかもな。まぁ、知り合いってとこだ。だから俺、お前にそんな優しくないんだよ」
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