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ー信頼ー114
「んー、でも、流石に懐中電灯も無い中で創作活動なんて事が出来る訳がねぇだろ? それに、流石の雄介だって体力が保たなくなってくるんじゃねぇのか? もう、何時間も海の中に潜ってるんじゃねぇのかよ」
「そうだよね……。流石に兄さんの前では言えなかったけど、やっぱり、雄介さんは流されてしまったり死んでしまったんじゃないのかな?」
「え? あ、ああ……」
朔望の言葉に、もうそう考えるしかなくなってしまったのだろう。和也は朔望と同じ考えになってしまったのか、言葉を詰まらせた。
「そ、そんな事ありませんよ! 雄介さんは絶対に望さんの為に帰って来ますから!」
「その根拠は?」
朔望からの問いに答えられない裕実。だって、そうだろう。未だに帰って来る気配も無い雄介。確かに朔望の言う通り、もう『死』しか実際問題考えられないのだから、生きているという証拠も何も無い。そして、それを裏付ける根拠さえもない。
「確かに、根拠みたいなのは無いですよ。だけど、考えられないんです! あの雄介さんが望さんの事を残して死ぬなんて事……。今まで雄介さんは何度も望さんの為に怪我をしても、それでも何度も助かってきた人なんですから! だから、絶対に望さんを置いて死ぬなんて事は考えられないんです! 絶対に!」
半分泣きそうになりながらも、裕実は頑なに雄介が生きていると信じている。その気持ちはきっと、裕実の中で「雄介には生きていて欲しい」という強い希望から来ているのだろう。
「和也はどうするんです? ちゃんと雄介さんが生きているって希望を持ってるんですよね?」
「え? あ、ああ……まぁな……」
そう答える和也だったが、やはりまだ自信も無ければ希望も無いように思える。その態度に気付いた裕実は、勢いよく言葉を重ねた。
「和也がそんなんでどうするんですか!? 雄介さんは絶対に生きてるんですってば! 僕達が希望を無くしてしまったら、雄介さんが本当に生きて帰れなくなってしまいますよ! 望さんは勿論なんですが、流石に僕だって雄介さんの事は心配してますからね。雄介さんが海に入って数時間経っているんですから……心配しない訳が無いじゃないですか! 寧ろ、僕は泣きそうですよ。だって、お昼まで一緒にご飯を食べて笑って話もしていた人が今はいないんですからね。確かに、雄介さんがいない中では正直言って、僕だってどうしたらいいのか分からないんです! だけど、希望だけは無くしてはいけないと思うんです! 絶望なんて、まだしてはいけない! そう! 絶望より希望なんですよ! 希望を忘れてはいけないんです!」
裕実は力強くそう言い切った。そして、さらに続けた。
「それに、和也……僕達は朔望さんの言葉に流されちゃいけないんですよ! 考え方って人それぞれですからね! 朔望さんは雄介さんとは、まだそんなに深い仲じゃないから分からないのかもしれませんけど! それに、和也と雄介さんは親友なんでしょう! なら、雄介さんが絶対に帰って来るって信じなくてどうするんですか!? それに、和也が沈んでしまっていたら望さんの事をフォローする事も出来ないんじゃないですか!? 望さんと和也も親友なんですから、こういう時、望さんを助けてあげられるのは僕達しかいないんですから!」
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