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囚愛《エリックside》2
毎年夏頃になると、雅様はU-15のダンス大会に出場する。
その時私はリモート講義を1週間ほど休み、雅様と共に遠征する。
15歳の夏の大会。
優勝した日の夜、ホテルの部屋の手配でトラブルが起きた。
「ツインではなくてダブル…ですか?」
「申し訳ございません。部屋にトラブルがありまして…ツインは満室で空いていないんです」
「困りましたね…」
大会前にあんなに練習をして、疲れているであろう雅様がゆっくり夜に眠れないのは戴けない。
別のホテルを探すか?
「いいよエリック。どうせ寝るだけだし」
そう言って雅様は、フロントマンから部屋のキーを奪って部屋へ向かった。
「すみません、雅様…」
「大丈夫だよ」
夕食を済ませ、そろそろシャワーを浴びようと準備していると雅様に押し倒された。
ベッドの軋む音と共に、私を見下ろしている雅様がいた。
一瞬、何が起こっているのか脳が理解する前に首筋を舐められ、雅様の荒い呼吸が耳元から聞こえる。
「雅様―…?」
「エリック…好きだ…」
そして雅様は自分のズボンをさげ、私のシャツのボタンを外し、上半身を露にさせた裸体を見た瞬間―…
「―…!!」
私の腹部に雅様から放たれたばかりの熱を帯びた精液が飛び散る。
恥ずかしそうな雅様の顔を見て、冷静になれた自分がいた。
そうか。
そうだよな。
もう雅様も15歳で中3なんだ。
そういうお年頃だ。
私は自分の腹部に放出された雅様の精液を拭き取りながら、笑顔で言った。
「ふふ…雅様もそういうお年頃なのですね。言ってくだされば練習相手になったのに」
なぜ気付かなかったのだろうか。
「さぁ、もう寝ましょう」
翌日は前日の夜に何事もなかったかのように観光を楽しんだ。
しかし、その間も私は雅様の性欲について今後どうしていくべきなのかを考えていた。
「テリー」
「ん?」
「雅様も年頃のようで。セックスについてきちんと教えないといけないんだよな。どうしようか悩む」
「何かあったのか?」
そこでテリーに今回の夜のことを伝えると、テリーはとても悲しそうな顔をしていた。
「Oh…雅様…」
「どう教えていくべきか。私も性欲が無いから勉強をしないといけない…」
その日から休日を利用して性に関する情報を収集したり、動画などを見て知識を付けた。
雅様が私を押し倒したということは、女性じゃなくて男性を抱きたいのかもしれないと思い、念のためどちらの知識も頭に入れることにした。
そもそも私は性欲が無い。
そういう類いのものを見ても興奮せず、体も反応しない。
「俺じゃダメなのか」
「私に魅力がないからなの」
何人の恋人にそう言われて別れを告げられたか。
恋愛はよく分からない。
好きという感情も。
そもそも恋人がいたのも執事学校時代のみで、卒業後は雅彦様に遣えていたし、もう20年も恋人がいない。
いたとしても、どうせ悲しませてしまう。
自分はこうして主に遣え、執事業をしている方が性に合うのだ。
こんな私には恋愛は向いていないと今回改めて思った。
それから雅様に押し倒されることもなく、2年が過ぎた。
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