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囚愛Ⅱ《エリックside》6
お互い月明かりに照らされ、ベッドの上で愛しい人に見下ろされると、心が高鳴る。
私は雅様を見つめ、手を彼の頬に伸ばして言った。
「雅様…お願いです。今日は忘れられない日にしたい。だから気の済むまで私を抱いてくださいますか?」
今日は、今日だけは…自分の感情に素直になってもいいだろうか。
日付が変わればいつもの主と執事に戻るから。
だから、今だけは―…
「もちろん」
私は微笑み、両腕を雅様の首へ回してキスをした。
「綺麗だよエリック」
雅様は私の耳元でそう囁き、首筋を吸い、耳を舐める。
「あっ―…は、―…ん」
その行為だけで私の体が反応し、ビクビクする。
雅様は私の耳を舐めながら、乳首をいじる。
爪の先でカリカリと弄ったり、指先で上下左右にはじくように触ったり、指の腹でコロコロ転がす行為を繰り返す。
「アッ―…ん、は―…アッ。あっ」
そしてそのまま首筋から乳首へと口を移動させ、乳輪をなぞるように刺激してから、甘噛みをしたり、唇で挟むように吸い付いたり、上の前歯と舌を使って噛んだり。
両乳首を弄られ、硬くなっている私自身の先端からはトロトロした液体が溢れているのが自分でも分かった。
「あっ、あっ―…雅様…んっ、は…ぁ」
あぁ、もう欲しい―…
雅様は、その先端を手のひらで回しながら液体を回収する。
数秒間だけ扱き、その手を私の秘部へと移動させて指を挿入した。
私のナカは既に準備が整っていた。
「エリック…もう欲しい?」
雅様はゆっくりと指を出し入れしながら、夜景と月明かりに照らされて感じている私の表情を確認する。
私が頷くと、雅様はその姿を見て元に用意していたコンドームに手を伸ばす。
私は無意識にその手を掴んで、雅様を見つめて言った。
「雅様…今日は…コンドーム…無しで…」
なんて私らしくない発言なのだろうか。
自分でも驚いた。
でももう今日で最後だから。
雅様と体を重ねることは二度と無いから。
だから私のナカをあなたで満たして欲しいと思った。
雅様は深呼吸をして言う。
「エリック…それは俺の奥さんになってから。卒業してから、ね。君を大事にしたいんだ」
本当のことを言えたらいいのに。
もうすぐあなたに何も言わず、あなたの元を離れるから。
これがあなたとの最後のセックスだから。
事実を言えば、今の私の願いは叶うのに、言うことは出来ない。
そう理解し、私は掴んでいた手を放した。
雅様はコンドームを着用し、硬くなったモノを私の秘部に押し当てて、ゆっくりと挿入した。
「あっ…」
奥まで入ったことを確認し、私を見つめる。
私の心情を全て見透かされているようで、私はすぐさま顔を反らした。
「どうして顔を反らすの?」
「―…恥ずかしくて」
「今更じゃん」
そう言って雅様は、私の右手に自分の左手を重ねて手を握り、キスをしながら腰を揺らす。
「ふ―…あっ―…ん、んんっ…あっ」
雅様が私のナカを奥を突く度に、繋がれている手に力が入る。
キスをされ、
耳を舐め、
首筋に吸い付き、
雅様のどんな行為も私の心を揺らす。
散々お預けされた私の体はもう限界を迎えていた。
「はっ―…あっ、雅様っ…アッ、…イ…くっ!…イ、クッ」
そう言いながら雅様を見つめると、彼は更に腰の動きを速くした。
「いいよ、イッて」
「アッ、は、んんっ―…アッ、あっ、イ…く、イクッ…イクッ―…」
絶頂を感じ、自分の腹部に熱を保った精液が放出された。
そして雅様も私の奥深くで果て、コンドーム越しなのにナカで脈を打っているのが分かった。
雅様はまだ硬い自身をずるりと抜いて、新しいコンドームを装着する。
息を切らしている私にキスをしながら腹部にある私の精液を手で救い、馴染ませ、その指を私の秘部へ移動させ、指を挿入した。
「あっ…ん、―…アッ」
「まだ俺の形になってるね」
そう言って指を抜き、私の腰を掴んで体を回転させた。
私が正常位が苦手だということを知っているため、いつものように寝バックの体勢になり再び硬くなっている雅様自身を挿入した。
その体勢に私は焦った。
「雅様、や…待っ―…アァッ!か、おっ…!アッ、あっ」
今日は、今日だけは。
終わるまでずっと雅様の顔を見ていたい。
あなたの顔を見れる、最後のセックスだから。
快感に勝てず両手でシーツを掴みながら、雅様が奥を突く度に必死に何か伝えようと努力をした。
「…アッ!雅様、あっ、んん…顔、見た…アッ!顔をっ…見たい、です」
ようやく伝わったのか、雅様は動きを止めた。
「顔を見たい?俺の?」
「雅様以外に誰がいるのですか…」
「エリックの顔を見ながら気の済むまでセックスしていいの?」
声色だけで、まるで少年のように喜んでいるのが分かった。
そんなに私の顔を見るのが嬉しいのか…とても光栄なことだ。
「はい」
「地球が滅亡するまで抱くけどいい?」
なんて可愛らしい発言なのか。
そんな可愛い少年のような愛する人の顔を見たいと思い、私は笑いながら体の向きを変えて雅様を見つめた。
「地球の滅亡と雅様の体力、どちらが早く尽きますかね」
「なら試してみようか」
そんな冗談を言って笑い合い、月明かりに照らされた私を見下ろし、私の両手を握る。
出来ることなら本当に、
このままずっと、
この世が終わるその時まで、
ずっとずっと、こうして抱き合えたらいいのに―…
このお方だけは愛してはいけないのに、私の胸を弾けさせる。
20も下なのに。
関係ないくらいに、深く、深く落ちてしまう。
もうあなたを刻むことのない体。
あぁ、愛しい。
愛しいから堕ちていかないようにするのが精一杯で。
でもあなたの術中からは抜け出せなくて。
だからこそ、離れなくては―…
お互いに時間を忘れて、私を攻める愛しい人の顔を何度も見ながら抱き合った。
気付けば私の誕生日が終わり、エリック・ブラウンではなく、雅様の執事に戻らなければいけない時間になっていた。
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