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囚愛Ⅲ《雅side》2

―3月末日― アメリカに到着したのは夕方だった。 空港からタクシーに乗り込み、父さんの屋敷へと向かう。 「雅様、あちらの家です」 「でかー」 到着した屋敷はめちゃくちゃ豪邸だった。 門から屋敷へと行くまでに1kmぐらいはあるし、日本の家の2~3倍ある。 タクシーを降りてテリーが玄関のインターフォンを鳴らし、ドイツ語で家主と会話をする。 「“俺だ、開けてくれ”」 「“テリー、今開ける”」 おー、これぐらいのドイツ語なら理解できるぞ。 てか家の主はドイツ人なのかな? ちょっと勉強になるかも。 あー!それなら大学のドイツ語の課題持ってくればよかったじゃん。 ってダンスの練習でそれどころじゃないか。 そんなどうでもいいことを思っていると、ドアが開いた。 家主は金髪なんだ…エリックも金髪だよなぁ思い出す。 身長もエリックぐらいあるじゃん… ―…ん? 「“久しぶりだなテリー、ソフィア様も…”」 その声… 「…エリック?」 あの日のまま変わらないエリック。 見つけた。 そうだ、習ったドイツ語で胸ぐら掴んで「勝手にいなくなるなよバカ」って怒鳴るんだろ? 「雅様…」 胸ぐら掴んで… 「エリック…元気だった?」 「…はい」 言えなかったよ、嵐。 胸ぐら掴んで勝手にいなくなるなよって。 元気だった?なんて普通に日本語で聞いちゃってさ。 エリックの微笑んだ顔で「はい」なんて言われたら許しちゃうよ。 あぁ、色んな感情が混ざったこの気持ちどうしたらいいんだろう。 「4月29日にダンスの世界大会があってな。雅様が出場する。まぁ日中はダンスの練習で専属のダンサーと練習をするから寝泊まりのみという感じだが」 「テリー、エリックに言ってなかったの?とても驚いてるよ。だったら迷惑だし、ホテルに滞在しよう」 エリックが生きてたのは嬉しいけど、恋人がいるかもしれないし。俺のこと嫌いかもしれないし。 「いえ、雅様。私は構いませんよ。ここは雅彦様の家ですから、きっと雅彦様も喜んでいます。1ヶ月だけよろしくお願いします」 エリックにそう言われて、俺はほっとした。 それと同時に、俺はテリーに荷物を預けて即座に家にあがった。 そしてインナーで隠れているエリックとのペアネックレスをバレないように外し、そっとポケットに閉まった。 こんなの身につけてるのがバレたら、まだエリックのことを好きだと思われて引かれてしまうかもしれない。 俺の愛が重すぎて何も言わずに離れたのかもしれないし。 プロポーズの時に用意していたエリックの名前が刻まれた指輪をこの3年間左手の薬指にしてたけど、これはむしろこのままでいい。 きっとこれを見ればエリックは俺に恋人がいると勘違いして安心するだろうから。 まだ好きだとバレないように過ごさないと―… 「エリックー!これ父さんの写真?エリック若いー」 父さんの家にはたくさんの思い出が飾られていた。 「母さん可愛いー」 あまり会えなかったけど、父さんがいると楽しかった記憶だけは覚えていた。 「父さんの部屋はー?」 「生まれたばっかの俺?小さいなー!」 エリックと共にルームツアーをした。 「“エリックーーー!!”」 エリックとルームツアーをしていると、階段を駆け上がって俺たちの元へ泣きながらやってきた人物がいた。 「“エリック、昨日は………!”」 「“アル!………なぜ……?”」 彼はドイツ語でエリックと会話をし始め、そこにテリーも混ざってきた。 「“俺が……”」 「“テリー…”」 本場のドイツ語が早すぎてみんな何て言ってるのか分からない。 とりあえず銀髪で色白の男は泣いていて、 エリックは怒っていて、 テリーは笑っていて、 ―…余計に分からない。 「“俺……許して……”」 「“テリー”」 「“…理由を……知らない……、エリックが―………怒る……、お前エリックを……?”」 テリーは笑いながらドイツ語でそう言って銀髪の男を見ると、彼は俯いて肩を落とした。 「“……ごめん”」 「“ははっ……。―……エリック。親友……の―…”」 「“…もう二度とするなよ”」 たぶん、彼はエリックに何かをしたのかな? エリックは怒っているから、泣きながら謝っているのかな? エリックがため息をつくと、銀髪の男はエリックを抱きしめて喜んだ。 「“ありがとうエリック!!―……彼は?”」 「“以前の……”」 「“…へぇ。……三科雅彦Jr.―……?顔が―………―……?”」 「―…」 えっと、たぶん父さんの名前を言ったのかな? 父さんの知り合いなのかな? マジで早すぎる本場のドイツ語… 「“アル、雅様はドイツ語は―………。日本語―……―…―…”」 銀髪の男はエリックから離れ、俺に跪いて顔を上げ、英語で自分を紹介し始めた。 「《僕はアルベルト・クラウゼ。エリックの同僚で執事学校時代の同級生です。アルとお呼びください三科雅彦Jr.様》」 ああ、なるほど。 彼はエリックの同僚で同級生で、だからテリーのことも知っているのか。 「《―…Jr.じゃなくて雅だよ。よろしくね、アル》」 「《ふふ。よろしく雅》」 そう言って俺たちは握手をし、数日で仲良くなった。

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