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囚愛Ⅲ《雅side》3

エリックは日本にいる時と変わらずに俺に接してくれた。 よかった。 嫌われたと思ってたから。 無理に押し掛けて、帰れと言われたらどうしようと思ったから。 受け入れてくれて、会えて嬉しい。 この1ヶ月を大切にしよう。 日中エリックは執事学校の講師、俺はダンスの練習をしに出掛けている。 エリックと顔を合わせるのは朝食と夕食を共にするぐらい時ぐらいだった。 「《テリー相変わらず、お肉好きだねぇ》」  「《ソフィア様が肉は食わないからなぁ。食えるときに食っておかないと》」 「《アル…毎日のように来るな》」 仕事帰りにアルがこの家に来るのが日常茶飯事になっていた。 「《いいでしょテリーもいるし。たくさんいたほうが楽しいし。ねぇ雅、動画サイトで君のダンスを見たけどとても素敵だね》」 「《ありがとう、アル》」 アルは毎日のように、積極的に俺とコミュニケーションを取ってくれた。 どの動画のどんな振り付けが好きか、 自分のことや、執事学校時代のこと、 テリーやエリックの裏話など、 そして昔からずっとエリックに片想いしていたことなど、たくさん教えてくれた。 「《雅は、恋人いるの?》」 そう言われ、左手の薬指の指輪をアピールして笑って見せた。 「《いいなぁ。羨ましい》」 恋人なんてずっといないけどね。 というか、この21年間恋人いたことないじゃん。 高校まではずっとエリックが好きだと周りにアピールしていたし、大学ではこの指輪のおかげか誰からも告白されないし。 まぁでも、またこうしてエリックに会えただけでも俺は満足だから。 1週間が経ち、休暇が被り4人で観光と買い物をしに出掛けた。 「《アル!俺のバッグの内側に財布入ってるから取って支払って。両手塞がっててさ》」 「《了解》」 買い物カゴも持たずに大量に品物を持った俺のボディバッグの中から財布を取り出し、代わりに払うアル。 「《雅、荷物持つよ》」 「《ありがとうアル》」 日本に帰ったときのためのお土産とか、自分用の服とか俺が購入した荷物をアルがもってくれて買い物を楽しんだ。 1日中歩き回り、ディナーのためレストランへと入る。 食事を堪能しながら歓談し、デザートが届いたところでアルがエリックに話し始めた。 「《そうだエリック、言い忘れてたことがあった》」 「《なんだ?》」 そしてアルはエリックの左手を取り、手の甲にキスをして言った。 「《プロポーズの返事、楽しみにしているよ》」 「《アル!》」 アルベルト以外の全員が驚いていた。 エリックのこと好きだと聞いてはいたけど、まさかプロポーズしてたなんて。 「《さぁ皆、デザートが溶けてしまうよ》」 そう言ってアルは何事も無かったかのようにデザートを食べ始めた。 帰宅後アルと別れ、自宅に戻るとテリーがニヤニヤしながらエリックを見ていた。 「《お前、アルにプロポーズされてたのか?》」 「《―…私は友人としてしか見ていない。交際すらしていないのに》」 「《アルは優良物件だぞ。金はあるし、性格もいい。そして昔からお前をすごく愛している》」 確かに、アルは優しくて気が利く。 エリックとの年の差も2歳。 誰から見てもお似合いだと思う。 エリックがアルベルトを選んで幸せになるなら、俺は祝福する。 祝福したいわけじゃないけど、祝福はする。

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