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囚愛Ⅲ《雅side》6
「雅様…私は最低な人間です。一夜だけの過ちを犯したいと願ってしまう」
何言ってんだよエリック。
俺を試してるの?
今、幸せなんだろ?
なんでそんなこと言うんだよ
「エリックはアルベルトと結婚するんじゃないの?」
俺はエリックの顔を見ずに問いかけた。
「…アルのプロポーズは断りました」
プロポーズを断った?
いや、意味分かんないよ。
やっぱり俺を試してるの?
「でもさっき、いつかアルベルトと結婚できたらって…」
「脳はアルと結婚しろと理解しているのに、心は全く理解してくれない。雅様を想えと言われているかのようにズキズキするのです」
俺を想うってどういうこと?
そんなの俺の方こそ理解が追い付かないよ。
「俺を…?でもアメリカに来て今幸せって言ってた…」
「3年間あなたのいない生活がどれほど苦痛だったか…私が幸せと言ったのは、たった1ヶ月の間だけでも雅様が目の前にいる今が幸せだという意味です」
待ってよ。
もう、それってさ―…
「…俺を愛してるのエリック?」
俺はエリックの腕を振り払ってベッドへと上がり、彼を見下ろして問いかけた。
「はい…愛しています」
嘘だ
嘘だ
嘘だ
だって、愛してるなら何で離れたんだよ。
俺のこと嫌いになったから離れたんでしょ?
そうじゃなきゃ俺の愛を知ってて離れるなんておかしい。
嫌われてなかった。
むしろ愛されていた。
何だよこの感情―…
「雅様…泣いているのですか?」
この3年間の辛さや寂しさを振り返ると、涙が止まらなかった。
「ごめん…俺はてっきり、エリックに嫌われたのかと…急にいなくなるほど俺のことを嫌になったのかって…この3年ずっと思ってたから」
「あぁ、雅様…泣かないで。ごめんなさい…あなたを不安にさせて。嫌いになるわけない。愛しくてたまらないのに」
そんな愛しい目で嬉しいこと言われたら、俺の涙は溢れて止まらない。
「だからこうしてまた会えただけでよかった。例えアルベルトと結婚しても、エリックが幸せならそれでいいと思った」
吹っ切ろうとしたのに。
アルベルトと幸せならそれでいいって。
なのに何だよこの状況は。
「ごめんなさい。雅様も私を忘れて、この左手の指輪の相手と幸せになろうとしているのに…」
そう言ってエリックは俺の左手に自分の手を重ねて指を絡める。
指輪―…?
ああ、そういえばずっと身につけてたな指輪。
俺は指輪を外してエリックへと渡した。
「指輪の刻印、見てみて」
エリックは指輪の内側に刻まれている刻印を確認する。
「私の名前…」
「エリックにプロポーズしようと決めて、お互いの名前が刻まれた婚約指輪を作っていたんだけど、まさかいなくなるなんて思ってなかったから…今でもずっとエリックを愛している」
もう片方の俺の名前が刻印された、エリックが着けるはずだった指輪は捨ててしまったけど。
この指輪だけはずっと捨てられなかった。
エリックを忘れたら捨てようと思って3年間外すことは無かった。
「今…私の顔を見ないでください」
「?」
「嬉しくて泣きそうです…」
その指輪を握りしめ、顔を反らして目に涙を浮かべるエリック。
「嫉妬したの?俺の架空の恋人に?」
「はい。とても。私以外を愛してしまったのかと…」
ねぇエリック。
嬉しくて泣きたいのは俺の方だよ。
いや、俺もう泣いてるけどさ。
「ねぇ…俺このままだと理性が飛んでエリックのことめちゃくちゃにしそうなんだけど。部屋に戻ったほうがいい?」
そう言って俺は軽くキスをして問うと、エリックはドイツ語で返事をした。
「“お酒の……、私を……”」
「“ドイツ語分からないから、もっとゆっくり”」
俺がそう言うと、エリックはゆっくり同じ言葉を言った。
「“お酒の…せいにして…私を…”」
お酒のせいにして抱いて欲しいと言ってることは理解できたけど、俺は分からないふりをした。
「“難しくて何て言ってるか分からない”」
そしてエリックは潤んだ瞳で俺を見つめて言った。
「“…愛しています。抱いてください”」
俺はその言葉に微笑み、そしてエリックに深いキスをした。
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