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囚愛Ⅲ《雅side》5

4月29日 ダンス大会当日 有名な世界的ダンサーが出場する中、俺は3位に入賞した。 大会が終わったあと、たくさんの関係者から大学を辞めて今すぐに躍りや振り付けをして欲しいと声をかけられる。 それもアリだよなと思い、名刺や連絡先を交換して皆の元へ戻った。 「おめでとうございます雅様。世界3位なんてすごいですね。帰国の前日に皆で祝賀会をやりましょう」 「ありがとう。まさか入賞出来るとは思ってなかったからよかったー」 俺が帰国するのは5日後。 5日間はゆっくりして、行き残した場所に行って日本に帰る。 エリックにも会えたしアメリカは最高だったなぁ。 「やっとお酒解禁だぁー!!」 帰り道の車内で、俺は背伸びをして窓の外を眺めながらそう言った。 「お酒?」 「大会終わるまで飲まないようにしてたんだよ」 「知らないだろエリック。雅様は超ド級の酒豪だ」 そう、20歳になったと同時に解禁した飲酒。 俺はいくら飲んでも酔わなかった。 「そうか。雅様ももうお酒が飲める年齢になったんですね」 そして、そのまま酒の買い出しをして帰宅をした。 バーにでも寄ろうかと提案されたが「酒樽が足りなくなってバーが潰れるから家で飲みたい」と俺が笑って言い、家で飲むことになった。 PM8:00 「よーし飲み比べだ!」 「テリー、お前は弱いくせによく張り合う。私は酒豪と言われた雅彦様よりも強いのを知っているだろう?」 夕食を済ませ、一休みしてからテーブルの上にビールとワインとウィスキーを置いて勝者の目をするテリー。 俺にビールを注ぎながら、テリーはエリックを見て言う。 「で、お前はアルのプロポーズはどうするんだ?」 テリーなんなのその笑顔腹立つんだけど? 君はエリックとアルベルトのキューピッドになろうとしてる? 「アルと結婚できたら幸せかもしれないな…」 「そうだよ。いいじゃないか。お似合いだよ。報われるなぁアルベルトも」 うん、そうだよ。 誰が見てもエリックとアルはお似合い。 アルなら一途にエリックを愛してくれる。 エリックへの愛は負けないけど、同じぐらいアルもエリックを愛してくれるはずだ。 「エリックはアメリカに来て、今幸せ?」 ビールでは満足できなかった俺は、赤ワインを飲みながらエリックを見つめて問いかけた。 「はい」 「そっか。エリックが幸せなら俺も嬉しい」 エリックが幸せなら、それでいい。 前みたいにこうして普通に会話できるだけで俺は満たされてるから。 飲み始めて1時間したところで、テリーは酔いつぶれてリビングのソファーで寝ていた。 「テリー…弱すぎ…」 「そうなんです。昔から弱いのにお酒が好きで…」 テリーが寝ている間に俺とエリックは二人きりでこの前以上にたくさんの話して、気付けば飲み始めて5時間が過ぎていた。 「雅様…少し席を外します」 そう言ってエリックはリビングを出ていった。 俺はエリックが戻るまでSNSのチェックや連絡の返信をすることにした。 そういや竜と嵐にエリックを見つけたって言ってないや。 帰国したら報告して驚かせよう。 「胸ぐら掴んでドイツ語で怒鳴れた?」ってニヤニヤしながら聞いてきそうな嵐が目に浮かぶなぁ。 ―…あれ、エリック遅くない? 部屋を出てから20分近くが経ち、エリックがまだ戻らないことに気付いた。 もしかして倒れてるかも、と思い探すことにした。 探すには広すぎるんだよなぁこの屋敷…と思いながら思い当たる場所を見渡す。 10分ぐらいして、2階の通路の壁に背中をつけて座り込んでいる息苦しそうなエリックを発見した。 しゃがみこんで自分の肩にエリックの腕を回し、持ち上げた。 「エリック、遅いから心配で探したよ。肩かして、部屋で横になろう」 苦しそうだなぁと思いながらエリックの部屋へと歩き、ベッドに降ろした。 仰向けになって息苦しそうなエリック。 「苦しそうだから少し脱がせて楽にするよ」 そう言って俺はエリックのシャツのボタンを外し、ベルトを外した。 エリックの部屋に置いてある小さな冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出してエリックの体を抱き寄せて口元へ運ぶ。 「少し水飲んで。自分で持てる?飲める?」 エリックは息を切らしながら、ゆっくりと水を飲んだ。 何も考えずエリックが心配で部屋に運んだりしたけどさ…冷静に考えたらこの状況ヤバいだろ。 シャツのボタン全開で腹チラしてるし、 ズボンのボタンも開いて誘ってるし、 水を飲む口元がエロいし、 息を切らしてるのがもう色っぽいし、 オン・ザ・ベッド… 二人きり… ―…考えれば考えるほどヤバイ 「よかった。少し楽になった?もうゆっくり休んで。俺も自分の部屋に戻るよ。おやすみエリック」 軽く水を飲んだエリックの体を横にして、髪を優しく撫でて俺はその場を立ち去ることにした。 だってそうしないと俺の理性ぶっ飛ぶもん。 アルベルトと幸せになろうとしてるエリックを抱いたら、もうそれは最低な人間だよ。嫌われものの脇役。ブーイングの嵐。 そう思って離れようとした瞬間、腕を引っ張られた。 「…行かないで」 エリックは握力が限界な手で俺の腕を掴み、その言動に俺の脳は理解が追い付かなかった。

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