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囚愛Ⅳ《エリックside》3

「雅、お待たせしました」 「《あぁ、エリック座って》」 雅は自分のデスクに座っていた。 指示されて隣に座ると、スマートフォンでなにか撮影をしているようだった。 「ん?…撮影ですか?」 「《今の気持ちを動画に残しておこうと思って》」 「なぜ英語なんですか?」 二人でいるときは日本語で会話をするというルールなのに、なぜか雅は英語で話し続ける。 「《いいから。エリックの想いを教えてよ。英語で》」 「《なぜ英語…》」 どういう理由があるか分からないが、私は英語で返事をした。 そして雅は私の髪を撫でながら問いかける。 「《今回の騒動で色々あったけどエリックは今、俺から離れたい?》」 そう言われ、私は少し黙った。 離れたくないが、雅のために離れたほうがいいのか最近ずっと考えていたことを思い出した。 「《離れたくはありませんが、それも選択肢のひとつなのかなと思います。まだ結婚もしていませんし。私は何を言われてもいい。でもあなたの人間性やダンスを否定されるのは物凄く嫌です》」 今回の騒動では私だけでなく雅の批判する声も多数あった。 私は余計にそれが許せなかった。 離れたら世間は雅を責めないかもしれない。 「《離れたら気持ちは変わる?俺を愛さなくなる?》」 「《いいえ、離れても愛しています》」 離れても愛しているから。 だからどうしたらいいのか自分でも分からない。 「じゃあ離れよう」と雅に言われたら、私はそれを受け入れられるのか? 「《それなら、さ…》」 次に雅が発する言葉が怖い―… 「《…俺と結婚しようエリック》」 雅はそう言うと、テーブルの下に隠しておいた大量の白い薔薇の花束を私に差し出した。 まさかの言動に、私はそれを受け取り驚いた表情を見せた。 ―…あぁ、泣きそうだ 「《こんなことされたら、もっとずっと一緒にいたくなってしまいます…》」 「《ねぇみんな、俺たちを祝福してくれる?》」 そう言って雅はスマートフォンの画面を見る。 みんな―…?と思い、その画面をまじまじと見た。 LIVE…生配信―…!? 「《―…LIVE?200万人…ライブ配信しているのですか!?止めてください》」 こんなものを配信したら、また余計にバッシングされてしまう。 「《愛してるよエリック結婚しよう。これからは君を傷つけるのは誰であろうと夫の俺が許さない》」 ―…そう思ってはいるのに 全世界に公開プロポーズを配信してくれている雅が愛しくて愛しくてたまらない。 「《こんな生配信をして…断わったら私は悪魔か何かと言われそうですね》」 「《そう。だから俺の天使になってよ。俺と結婚してくれる?》」 「《本当に私でよろしいのですか?》」 雅が大きく頷いてキスをすると、私の目からは 涙が溢れていた。 「《ずっと考えていました。私と雅は20も離れている。あなたはまだ若い。これから素敵な出会いがあるかもしれない。私なんかに時間を使うのは勿体ない。私に費やした時間が惜しかったと、そうなる前に離れるべきなのかと…》」 LIVE配信されているということを忘れて、雅に本心を伝える。 あぁ、愛してる。 年の差なんて、性別なんて関係ない。 「《そう考えていたのに、あなたにそれを肯定されて離れることになってしまったらと思うとその方が苦しくて…言えなくて…》」 「《エリック以外いらないよ。愛してる》」 「《後悔するかもしれない。必ず私の方が先に死にます…だからその時は他…んっ》」 私が「その時は他の誰かと幸せになって」と言おうとすると、雅はそれを言わせないためにキスで発言を止めた。 「《じゃあエリックのこれからの人生全てに俺が存在するんだね》」 「《私より先に死んだら許しません。その時は離婚です》」 「《そっちこそ覚悟はいい?もう二度と離さない。誰に何を言われても》」 「《私もです。愛しています雅》」 そして花束をテーブルに置いてキスをした。 私たちの愛のように深いキスを。 「《待って雅…キスなんか200万人に配信したくない》」 まだ配信されていることに気付いた私が、キスを止めて配信画面を指差した。 雅は画面を覗きこんで、精一杯の笑顔で言う。 「《もう500万人が見てるよ。じゃあね、みんな。ここからは俺とエリックの時間だから。今後、俺の奥さんを傷つけることは許さないよ》」 そう言って配信を止め、再び深いキスを続けた。

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