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囚愛Ⅳ《エリックside》2

「明日から3日間シカゴ。アメリカって広すぎだよね。同じ国なのに飛行機で4時間て移動だけで疲れる…」 「では雅、今日は疲れることをしないで早く寝ましょう。キスまでです。このイヤらしい手を放してください」 「ねぇエリック…明日もし飛行機事故で死んだら死にきれないよ?最後かもしれないから念のためしておこう」 「もう……んっ、は…」 雅はダンサーMiYaViとして振り付けやダンスの依頼を受け、私は変わらず執事学校の講師として働いている。 雅は遠征が多いが、共に充実した毎日を過ごしていた。 しかしアメリカに来て3ヶ月後、事件が起きた。 【ダンサーMiYaViは三科雅彦とソフィア・フローレスの息子】 という記事がニュースになった。 なぜバレたのだろうか? そう思っていると、執事学校のドイツ校の学長をしている父から連絡がきた。 「“ジェフ様の洗脳が解けたらしい”」 大資産家のジェフ・フレーデル様。 雅彦様の父親である彼は、正妻であるコルビナに洗脳されていた。 「“ジェフ様の執事が雅様を調べ始めていたようだ。本当に愛していたのは百合亜様だったようで、ずっと雅彦様の息子である雅様を探していたらしい”」 どうやって手に入れたのかDNA鑑定などもして。 これは大スクープだと思い、鑑定師が裏切って情報を売ったのだと。 そしてマスコミが過去を詮索し、真実から嘘まで色々な情報が出回ってしまった。 学校の生徒たちもそれを信じる者がいて、中にはボイコットする生徒も出てきた。 だからとりあえず、騒動が落ち着くまでは私を謹慎処分にするということだった。 「“エリック!謹慎処分なんておかしい!僕が学長に抗議するよ”」 「“ありがとうアル。大丈夫だから。私の授業、代わりに頼んでしまって申し訳ない”」 謹慎処分の期間は不明だが、ちょうど薬学の勉強をしたかったからいい機会だと思った。 「エリック執事学校は?今日平日だよね」 「しばらく休暇を取りました。雅と一緒にいる時間を増やしたかったので」 謹慎処分になったことを伝えると心配するだろうから、雅には黙っておくことにした。 一緒にいれる時間が増えて雅は喜んでいた。 あぁ、このまま講師を辞めて家にいるのもいいかもしれないと脳内を巡った。 「ねぇエリック知らなかったよ。謹慎中って」 「アルが言ったんですか?余計なことを―…雅のせいではありません。気にしないで。ちょうど薬学の勉強もしたかったので良い機会です」 私はそう言って、怒っている雅に優しくキスをした。 雅は何も悪くない。 言わせたいやつには言わせておけばいい。 だだ、情報がキッカケでフラッシュバックが起きないかだけが心配だった。 記事もどんどん出任せが増えていく。 「雅…大丈夫ですか?」 「大丈夫。エリックが傍にいれば何も起こらない」 「そうですか。それは良かった」 傍に居たい。 でも共に居たら迷惑がかかるかもしれない。 確かに20歳も年の離れている、ましてや元主と元執事。 世間が認めてくれないかもしれない。 離れたほうがいいのかもしれない。 でも私は、離れたくないんだ―… 「エリック。今日はバスタブにグリーンブルームバスソルト入れておいたよ。ゆっくり湯船に浸かっておいで。俺もツルツルでしょ」 「ありがとうございます」 「バスタイム終わったら俺の部屋にきて」 「雅の部屋に?寝室ではなく?」 「うん、俺の部屋。渡したいものがあるからさ」 渡したいもの? また指輪を突き返されたら… ネックレスを突き返されたら… 離れたほうがいいかもしれないと思う自分と、雅の傍にいたい自分。 雅は私を愛してくれている。 私も雅を愛している。 その想いだけで、一緒にいていいのだろうか。 彼が世間からバッシングされて、傷ついてもいいのだろうか。 ―…ああ、私はどうしたら グリーンブルームの香りを纏いながら、私は葛藤しつつバスルームを出て雅の部屋へ向かった。

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