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第14話 父側についた兄
「あはは。そうだったんですね」
もう笑うしかない、とでも言いたそうなハルをじっと見つめるタカ。
「……」
しばらくの間、沈黙が続く。そしてハルがタカに問いかける。
「タカさん、なんで兄は父についていったんですか。それも聞いていますか」
「はい。それは……お兄さんさんはハルさんみたいに視えたり感じたりする子供じゃなかったから。あんなことがあったけどお父さんは子供への愛情は強いほうでしたし、せめてお兄さんとは暮らしたかったようで。お兄さんの目にはそう映ったそうです」
「……」
「お父さんとお母さんは話し合って、お兄さんとお父さんが家を出ていくことになりました。お父さんはああいう感じだったので、まぁ必然的にハルさんはお母さんと一緒に」
「兄は……兄は、どんな気持ちだったんでしょうか」
「お兄さんは最初、旅行と思っていたそうです。新幹線に乗ってはしゃいで、そして辿り着いたのはお父さんの実家で。しばらくそこで暮らしていたそうです」
「僕は……朝起きたら兄がいなくて。部屋から物も減ってて。そのあと僕と母も別のアパートに引っ越しました。でもいつか兄たちは自分たちのもとに戻ってくるのかと思っていました」
「お兄さんもそう思っていました。いつか帰れるだろうと。でも転校することになって、その時に気づいたそうです。もう帰れないということを」
「兄は……大丈夫だったんですか。父と一緒にいて」
「子供はどうしようもできないですよね。お兄さんだって高校生でまだ子供だし、お父さんも当初は相当まいっていて、そんな姿を間近で見ていたから反抗はできなかったと。いくら弟にひどい態度をとっても、お兄さんにとってお父さんはお父さんですしね。そこには愛情もあったから」
「……」
「お父さんのこと、嫌いになりましたか」
「……よく、分からないです」
「こんな話聞いたら普通は怒りますし、嫌いになりますよ」
「え、あ、いや……父も戸惑っていたと思うし……息子が変な人間じゃあ、どう接したらいいか分からなくなるだろうし……」
「そこまで人の気持ちを考えるんですね。本当にお兄さんに似ています」
「え……」
ハルはタカからの視線が一瞬冷たく感じた。
「ハルさん、さっきの離婚の話に関係するんですけど、一度お母さんにお兄さんのこと探したいと言ったら怒ったって昨日言っていましたよね」
「はい」
タカが小さく息を吐く。
「これは僕の意見ですけど、お母さんはお兄さんづてにハルさんが過去のことを知るのが怖かったんじゃないでしょうか。兄弟仲良かったですし」
「……」
「大学の頃にお兄さんが話してくれた話はここまでです。ハルさんの過去、離れて暮らしたあとのお兄さんのこと、大まかなことは伝わったかと思います」
「……はい」
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