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第26話 タカとサエの電話
「もしもし」
「どうしたの?」
「ああ、電話ありがとう。あの……さサエちゃん。ハルさんに会ったんだよね」
「……」
「聞こえる?」
「……」
「あ……ごめん。電話じゃないほうが良かったかな。ごめんね、メールにす……」
「あ、ごめん。違うの、ちょっとびっくりしただけ。全然大丈夫。ヒロの弟さんだよね」
「うん」
タカは、ハルと初めて会った海でのことをサエに話した。
タカが話をしている間、サエは静かに相槌を打ち聞いていた。
「でさ、実はさっきもハルさんと会ってたんだよね」
「えっ!あ、そうなんだ」
「うん。まあ……いろいろ重い話を聞かせてしまったし、ハルさんもいろいろあって。ちょっと気にかけてる」
「そっか」
「サエちゃんのことも伝えてて、ハルさん会いたがってたよ。ただ俺がセッティングしたり勝手なことはしないから安心して」
「うん」
「サエちゃんさ、最近はどう?元気にしてるの?」
「元気にしてるよ。大丈夫。話すネタも溜めてるよ」
「ネタ!そっか」
ふふっとタカが笑った。
「サエちゃんお菓子作るの辞めないでね」
「うん。たまに作ってるよ」
「よかった。急にごめんね。一応ハルさんのこと伝えておきたくてさ」
「あ、ううん。大丈夫。ありがとう。タカ君は平気なの?」
「何が?」
「だって、ヒロの弟さんに会うってことは……いろいろ思い出したでしょ?」
「うん、思い出したよ。すごく。でもなんていうか、むしろ少しずつ肩の荷がおりてる感じもするんだよね。ヒロって弟のことすごく気にかけてたから。俺が代わりに出来ることしたいなって感じ」
「そっか。ヒロはタカ君のことすごく信頼してたもんね。頼れる相棒って感じで」
「そうだね。じゃあ、またなんかあったら連絡するね。今度ゆっくり話す。電話かけさせちゃってごめんね」
「ううん。私こそ連絡ありがとうね。じゃ」
タカはサエとの電話を切り、ふうっと深く深呼吸をして空を見上げた。
雲がオレンジ色に染まりかけていた。
「もう夕方じゃん……きれいな色してんなー」
タカは、小さな声でそう呟いた。
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