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第22話 フランクフルト

 花火が上がる時間が近づくにつれ、花火大会の会場である河川敷や屋台に人が増えてきた。 「ここ、よく見えそう」 フランクフルトを持った憂太が、屋台から少し離れた河川敷の傾斜している部分から手招きしている。 さっき髪型をぐしゃぐしゃに崩したのに、なんだかまだ憂太がかっこよく見える。 それは浴衣を着ているせいだと何度も心で繰り返し、冷静に返事をする。 「ナイス憂太。座る?」 「浴衣だし立ってる方が良くない?」 「あーたしかに。もうちょっとだけ上に行くか」 立っていると周りの人が見えにくいかもしれないなと思って、傾斜のさらに上の方へあがった。 「よいしょ。湊、かき氷落とさないように気をつけてね」 「わかってるって」 花火を見ながら食べるために買ったかき氷をこぼさないように慎重にのぼる。 「もうそろそろかなー、花火」 「んーたぶん?なんか湊、かき氷花火が上がる前に食べ切ってそう」 「そんなわけない!それよりフランクフルト一口食べたいからかき氷と交換しよ」 「交換?」 「そう。彼氏だったら、かわいい彼女に一口あげるもんでしょ?」 「んまあ、そう?」 「じゃ交換〜」 初めて彼女役という立場を上手く使ってやったと思った。 「はい、口開けて」 「え?」 「かわいい彼女に一口あげるんでしょ」 食べさせてあげると言って、一口二口食べかけたフランクフルトを目の前に差し出している。 「はい、いっぱい食べていいよ」 そう言ってさらにグイッと口元まで近づけてくる。

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