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第33話 憂太のいたずら?
とりあえず手をポップコーンの容器から出そうとする。
ぐるん、ぎゅ…。
手の甲側からゆるりと握られていた手がひっくり返され、憂太の足の上で互いの手のひらどうしが重なり、恋人繋ぎになった。
柔らかく握られていても、1本1本の指から憂太の体温を感じる。
運動部だった自分とは違って、憂太の手は薄くて、指は細長い。
綺麗な大きな手だが、関節がやや太くてちゃんと男性なんだなと思う。
普段なら手なんて特に気にならなかったのに、暗闇だから敏感になっているかもしれない。
「(もう!指!にぎにぎするなよなぁ、変な気分になってくる)」
いつもの憂太は「彼氏だったら」とか、「湊が彼女なら」とか一言いって、恋人の真似事をする。
だから、憂太の中では遊びの延長でのスキンシップだろうと思っていた。
なんの一言もない状態での、恋人繋ぎの真意がわからない。
恐る恐る、憂太の方へ向くと、口元を反対の手で押さえて笑いを堪えていた。
「(くっそ、俺の恋心を弄びやがってえ……)」
悔しさがバレないようにスクリーンに視線を戻した瞬間、耳元に吐息まじりの掠れた声がした。
「湊。そわそわしすぎ」
ビクッ。
身体全体で反応してしまった。
さっきまでの心の声を口に出していたのかもしれないと思って、すぐに憂太を見た。
憂太と目が合った。
そんな気がした瞬間、グイッと握っていた手が引っ張られて、憂太の席へ上半身が乗り掛かるような体勢になってしまった。
「(もぉー、また!…こんな体勢、俺が憂太にちょっかいかけてるみたいじゃん)」
手を離して、何か言い返してやろうと思ったのに、憂太はにやけ顔のままさっきよりも強めに手を握って離してくれない。
映画が終わるまではまだ30分以上はあるはずだ。
憂太もちょっとはドキドキするだろうと思って、映画が終わるまで手汗がかかない程度に握っておいた。
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