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第32話 上映中の憂太

 スクリーンの中では、ヒロインに幼馴染みとバスケ部の先輩の2人共が同じ時期に告白していた。 さらに、2人から同時に迫られ、悩ませてしまっていることを知った幼馴染みは、ヒロインの幸せのためにと身を引こうとしている。 「(えぇ、幼馴染みくん、もっとぐいぐい頑張れよ。あーでもそれをしたら、ヒロイン悩ませるしなー)」 感情移入して観ているうちに、いつのまにか2人の間にあったポップコーンが無くなりかけている。 「(あ、もう無くなりそうだし、残り憂太食べるかな?………え!?)」 急に手の甲があたたかい何かに包まれた。 「(ポップコーンと俺の手を間違えたのか…?)」 前を向いたままの憂太が手を重ねてきていた。 「(え?憂太、え?これ、わざと…?)」 憂太の手はスルリと指を絡ませて握ってくる。 さっきまで俳優がイケメンだとか、幼馴染みがんばれとか考えていたのに映画どころではない。 「(え、ど、ど、どうしよ。握り返すのが正解なのか…?)」 頭の中で状況整理ができない。

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