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第56話 満たされた気分
憂太と付き合ってから数日が過ぎた。
お互い大泣きしながら胸の内を明かした夜は金曜日だったから、大学に行くのは土日を挟んで2日ぶりだ。
1月の朝の気温は低く、雪が降りそうな空が町中の景色を無彩色にしている。
「(俺、ほんとに憂太と付き合ったんだよな。大学行ったら憂太どんな感じなんだろ。早く会いてえ…)」
大学までの見慣れた道が色鮮やかに見えるくらいには浮かれている。
「(ま、あの日以来だしなー。浮かれんのもしかたないっ)」
大学生にもなって大泣きした挙句、憂太へ告白したあの日のことは、ずっと忘れないと思う。
あの日の夜は、一気に色んなことを話して、お互い安心したのか、疲れたのか、夜ご飯を食べた後はすぐに寝てしまった。
いつもの憂太はベッド、湊は布団を敷いて寝るスタイルではなく、一緒のベッドで眠った。
男2人でベッドに寝ころぶと少し窮屈だったが、その窮屈さも幸せだった。
それに、隣にいる憂太からシャンプーの香りがしてドキっとした。
睡魔に襲われぼんやりしながらも、満たされた気分になったのを覚えている。
もう少しで教室に着くというのに、思い出しながら歩いていたから、にやけ顔が元に戻らない。
「ねえ!あれ誰?」
教室までの廊下で女の子たちの声が聞こえてきた。
「あれ、憂太くんじゃない?」
「えぇ?違うって!だって、背の高さくらいしか合ってなくない?」
「じゃ、誰?あの長身のイケメン!」
憂太の名前と共に、「イケメン」「かっこいい」という言葉が聞こえてきて混乱してきた。
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