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【番外編②】戻らない日常/憂太の過去(7)

※憂太の過去の回想は次までです。次の次から現在に戻ります※ ※待ち合わせ場所で合流した2人は、お互いアイスを買っていることが分かり、大笑いしています。「憂太、なんでアイス買ってんだよ!」「湊を急に呼び出して悪いなって思って。湊こそなんで?」「俺は、アイス食いたくて、どうせなら2人で食べれた方が美味いじゃんって思って」※ 「あら、目が覚めた?」 閉じた目を開くと、教室のものとは違う蛍光灯が目に映った。 「…ここは」 「保健室よぉ。あなた、過呼吸になって倒れたのよ。体調あまり良くなかったのに無理してた?」 「い、いえ…」 初めてだった。 苦しいと思って、目を一瞬ギュッと瞑っただけだったのに倒れていたなんて。 「無理せず寝てていいわよ」 「ありがとうございます」 それでも落ち着かなくて、身体を起こした。 「あの、僕クラスで倒れたんですよね」 「そう。担任の先生が血相を変えて、あなたを抱えてくるわ、クラスの子は驚いて泣くわで大変だったのよ。倒れた拍子に頭を机にぶつけたみたいだったから特にね」 右のこめかみ付近を触ると、小さなタンコブができていた。 「(だから頭に包帯巻かれて冷やされてるのか)」 「ただね、誰に聞いてもあなたが倒れたときのことを話そうとしなくて、困ってたのよ。説明できそう?」 説明なんてしたくない。 だけど、保健室の先生を困らせるのはいけないし、説明を試みる。 「別のクラスの子と少し話をしていて」 話し始めた途端、また息がしづらくなってきた。 「…っはぁ…トラブルがあって、きちんと説明しようと…おもっ…はっ…はぁ…」 また、苦しい。 だめだ。 「あぁ、もう話さなくて大丈夫!ゆっくり息を吐いて…鼻からゆっくり吸って…」 言われた通りにする。 涙が溢れてくる。 「つらいことがあったのね。話さなくても大丈夫よ。担任の先生には上手く言っておくから、そのまま今日はここで休んでていいわよ」 保健室の先生の暖かくて、優しい喋り声が安心する。 「っひっく…ありがとう…ございます…」 「いいのいいの、気にしないで」 2学期早々、保健室で丸1日休んだ。  6限目が終わり、誰とも会いたくなくて、みんなが帰る時間から少し遅めに保健室を出た。 「あ!憂太!」 誰かに名前を呼ばれて、ビクッと身体が大きく反応する。 朝、ぎこちない挨拶をしてきた山岸だった。 「な、なに…」 「朝はごめん、態度悪かったよな。あの後な、何人かが隼人に何があったのか聞いててさ。みんなに説明してたんだけど」 山岸からの説明を聞かなくても、真実ではないことを話していることだけは分かる。 坊主に近い頭をした山岸はポリポリと頭をかきながら話し始めた。 まず、憂太が麻生と付き合うために、元々相談に乗るというフリをして麻生にちょっかいをかけていたこと。 喧嘩が続く隼人と麻生が、お互い冷静になる期間を設けたときに、憂太がしつこく麻生に交際を迫ったこと。 そして、困った麻生が形だけ付き合うことを受け入れたが、やはり隼人のことが好きで、不誠実なことはできないと交際を断ったことを話してくれた。 交際を断られたのに、麻生を諦めていない憂太は、しつこく迫り困らせていると付け加えた。 「なに、それ…」 事実と一部違うとか、認識のズレというレベルではない。 「全然、違うんだけど。なんでそんなこと言われてるの、僕…」 「違うの?」 「ちがう。本当は…」 全て話した。 だけど、あまりの違いに山岸は「ここまで違う話だと誰も信じないかも」と青ざめていた。 僕も「そうだよね」と言って、現状に絶望しながら家に帰る。 どれだけの人がこの話を聞いて信じたのだろうか。 僕が倒れた瞬間、助けようとしてくれたのは先生だけだったのかな…と考えながら帰る道のりはとても長い。 こんなに一瞬で当たり前の日常が崩れるなんて思ってもみなかった。 道を歩く全ての人が敵に見えた。

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