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安野達が混乱していると、「私はただ御月堂様にここに連れて行くように言われただけなので、全ては分かりかねますが⋯⋯」と申し訳なさそうに言った後、こう続けた。 「ご子息を母親である姫宮様が帰って来られるまでお世話をするように⋯⋯と」 「⋯⋯え?」 「姫宮様が⋯⋯?」 「帰って来られる⋯⋯?」 安野、今井、江藤はぽかんとした顔になった。 「ええ、御月堂様がそうと」 「姫宮様、ご無事でいらしていたのですか?」 「それに関しましては私は何があったのか詳しくは知りませんが、お姿はこの目で見ましたので、私はそこまでとしか⋯⋯」 困った顔をして返答する運転手を尻目に四人は顔を見合わせた。 姫宮が帰ってくる。 運転手もどんな状況かは把握してないようで、本当はもっと訊きたいがそれ以上のことは訊けず、けれども待ちに待っていた人が帰ってくるという事実だけが安野達の覇気が宿る。 「こうしちゃいられないわ。迎える準備をしないと!」 「ええ、いつも以上に綺麗にしませんと!」 「さて、今から忙しくなりますね!」 「こんなに仕事に精を出すのはいつぶりかしら!」 輪になって盛り上がっていると、「⋯⋯あのー、私はこれから御月堂様のお迎えがありますので⋯⋯」と言っていたものの、安野達は聞こえず、しまいには「⋯⋯では、失礼します⋯⋯」と出て行ってしまった。 「ひとまず、姫宮様のご子息を⋯⋯って、あれ? 帰ってしまってますね」 「いつの間に⋯⋯まあ、御月堂様のことで帰ってしまったのでしょう」 「ご子息は私達がお世話してくれと仰せつかってますし、やり遂げましょう」 上山が言うのを、他三人は「ええ」「はい!」と口々に言い合って、大きく頷いた。

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