そして、一斉に男の子の方を見た。 「まずは自己紹介ですね。私は安野と言います。あなたのお母様のことが大好きな者です。お母様がお仕事されている時よく一緒にいたのですが、お仕事として、というよりも個人的に依頼された方のお子様をとても大事にされる方でした。あのようなお仕事をされるのは、誰かのためにしてあげたい気持ちがあるからなのでしょうね。並大抵の人には出来かねません。そう！ お子様のことを優しく撫でる仕草！ そしてそれを見る穏やかな目は普段見られない貴重なお顔で無限に撮りたくはありますがそれでは姫宮様に気づかれてしまうのでいつも心のシャッターで──」 「ストーップ！ 安野さんあまりにも語りすぎですよ。ご子息も私もドン引きです」 今井に止められて、ハッと現実に引き戻された安野は、「申し訳ございません。あまりにもあなたのお母様が素敵すぎて⋯⋯」と謝罪するが、まだ語り足りないと顔に書いていた。 それに気づかない振りをした今井は、そこで男の子のある行動に気づいた。 パッと見、微動だにしない表情であったが、緊張した面持ちのように見えた。 それは無理もない。何せ、この男の子にとっては知らない場所で、見知らぬ人達なのだから。 そんな顔をするのはごく自然と言えるものだ。 「私は今井と言います。あなたのお名前は？」 できるだけ緊張を解そうと、にこりと笑みを浮かべて穏やかな口調でそう尋ねた。 が、その瞬間、まるで怖いものを見たかのように顔を引きつらせ、怯えた表情を見せたのだ。 何か、この男の子にとって嫌な顔に見えたのだろうか。 今井の顔が嫌だったとか？ 何がどうしたのか。 「みんなして玄関に集まって何をしているんですかー？」