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「あ、はい。ひとまずは。なので、先ほど作った雪だるまのところへ戻ろうと思っています」 「なるほど。では、私も同行するとしよう」 「え、ですが慶様。お仕事の方は⋯⋯」 「時間にまだ余裕がある。それよりも少しでもお前達と一緒にいたい」 先ほどの自然な笑みとは違う、笑っているような不確かな表情であったが、その顔でも言葉に偽りがないと思った途端、御月堂も同じ気持ちだったのだと思い、嬉しい気持ちになった。 「大河、私も一緒に行ってもいいだろうか」 再びしゃがんでは、大河に訊ねていた。 ところが、大河はすぐに頬を膨らませ、まるで怒っているような態度を示した。 「大河、そんなことしちゃダメだよ」 「いや、当然の反応だ。大河は母親のことが大好きで、独り占めにしたいのだろう。私のような人間がいては嫌で仕方ないだろう」 「そんなことは⋯⋯」 「いや、気を遣わなくていい。では、私は仕事に戻ることにする」 「あ⋯⋯」 踵を返す御月堂を咄嗟に引き止めようとした。 だが、そんなことをしては大河が嫌がるだろうと思い、留まった。 けれども、またいつ会えるか分からないから、もう少しだけ話したかった。 何かきっかけはないだろうかと模索している時、触っていたマフラーの存在に気づいた。 そうだ、このマフラーを返さないと。 「あの、慶様⋯⋯」 遠ざかっていく後ろ姿を追いかけようとした時、転んだ。 「慶様っ!?」 驚き、駆け寄ろうとした。しかし、その咄嗟の行動が仇となり、あと一歩のところで足を取られてしまった。 「⋯⋯てて⋯⋯っ」 場所的にそんなにも痛くはないかと高を括っていたが、それなりに痛む。 さっき大河は大丈夫だっただろうか、これでは人の事を言えないと自身の行動を恥じた。

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