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11.
「愛賀、大丈夫か」
「はい⋯⋯。慶様を助けに行こうとしましたら、私まで転んでしまいました。お恥ずかしい⋯⋯」
「それは私もだ。来る時は転ばずに済んだものだから侮っていた。私がもう少し注意していれば、愛賀が転ばなかった」
「慶様、それは⋯⋯」
私が勝手にした行動ですから、と言おうしたものの、「立てるか」という言葉と共に手袋を外した手を差し出されたことで、かき消されてしまった。
仕方ないと素直にその手を取った。
その手に触れた際、姫宮の頭を遠慮がちに触れるかのように握り返すかと思っていたが、今はしっかりと掴み、引き上げてくれた。
状況が状況であるから当たり前ではあるが、姫宮にとっては当たり前ではないちょっとした行動で、ふわっと心が暖かくなるのを感じた。
「ありがとうございます」
「どこも怪我はないか」
「はい。慶様は?」
「私も大丈夫だ」
「⋯⋯⋯」
いつもなら手も目もすぐに離すというのに、今回ばかりはひとときも離れたくないという気持ちが行動に出たのかもしれない。時が止まったかのように見つめ合っていた。
青空の下、白銀の世界に包まれた彼の姿は幻想的で、普段とは違った姿を見せていた。
そのせいなのか、初めて会ったかのような、ひとめぼれしたかのようなときめきを感じていた。
積もった雪に照らされて、艶のある血の通った唇がやけに目立つ。
触れたい。
姫宮よりもやや白い肌に、寒さでうっすらと色づく頬に触れる。
「愛賀?」
「慶様⋯⋯」
自ら顔を近づけ、その唇に触れようとした、その時。
遮るように御月堂の肩辺りに雪がぶつかった。
自分がしようとしたことを恥じる前に、何が起きたのかと我に返った。
「⋯⋯今の、なんですか」
「⋯⋯大河が雪をぶつけ──っ」
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