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12.
振り返った時、御月堂が言う通り、彼に向かって雪をぶつける大河の姿があった。
「大河っ、なんてことをしているのっ」
すぐさま窘めようとするが、また丸めては御月堂に向かって投げつけている。
「大河⋯⋯さっきから慶様に酷いことばかりしているよ。そういうことはしちゃダメなんだって⋯⋯」
丸めた雪を人に投げつけるなんて悪いことをどこで覚えたのだろう。
俯き、しかしむくれている様子の大河をどう窘めたらいいのか分からず、頭を抱えた。
「大河。母親の言う通り、人に雪をぶつけるというのは良くないことだ。母親を独占したいとはいえ、今の行動はさすがの私でも怒る」
「⋯⋯っ」
ピクッと、小さな身体を震わせた。
怒られるのは当然だ。けれども、これ以上御月堂のことを嫌ってしまったらどうしよう。
鼓動が速まるのを感じつつ、口を出してはならない状況を見守っていた。
「⋯⋯しかし、これだけは言わせてくれ。先ほどの大河がぶつけたくなったあの行動は、母親からしたことだ」
「⋯⋯え」
不意に自分に振ってくるとは思わなく、豆鉄砲を食らったような顔をし、そして、先ほどはさして思わなかった自身の行ないに頬が熱くなった。
「母親は大河のことはもちろん好きだが、同じくらい私のことも好きであるから、あのようなことをしたのだろう」
質問を投げかけるような口調で姫宮のことを見てくる。
「け、慶様⋯⋯っ、これ以上は⋯⋯」
「だから、大河。母親にもぶつける権利はあるはずだ」
「え⋯⋯慶様⋯⋯?」
我が耳を疑った。
大河にそのようなことを言うなんて。
大河はというと、上着の裾をぎゅうっと掴んで、唇を引き結んだ。
姫宮のことをそうしたくないのか、それとも、そもそも御月堂がそう言ったこと自体不服なのか。
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