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第1話 一途で可愛い花婿は執着イケメンに車内で調教される

 肌寒い秋から、ずいぶんと冷え込みが強い冬が訪れた。AKIRA・HIGASIOのアトリエは寒がりな東尾明のために暖房と加湿器が日中ずっと点けられていて、とても快適な空間となっていた。  デスクに座りながら、一人夢中になってスケッチブックにスーツのデザインを描いていた明は、持っていた鉛筆を机に置くとスケッチブックを両手に持って持ち上げ、目を輝かせながらそれを眺める。 「出来た!」  五ヶ月後にある結婚式場のオーナーから頼まれたホームページ用のイメージ動画に使うスーツのデザインが、やっと完成した。前回は旭と敦だけの写真撮影の依頼であったが、今度は明と新も一緒に動画を撮らないかと式場のオーナーに言われ、二人も喜んでそれを引き受けた。  その時に、また自分の制作したスーツを着て撮影していいと許可をもらった明は、親友と幼馴染と恋人のスーツを自分で作れることに張り切って、その日からデザインの作成に取り掛かった。  西園新と両思いになって、週刊誌に記事が載ってしまったものの、危惧していたこととは裏腹に、世間は自分達の関係を祝福してくれていて、お祝いの言葉までかけてくれる。こんな幸せな気持ちでデザインするスーツはきっと最高の出来になるに違いないと思っていたが、それは的中したようだ。  前回のスーツよりいいデザインの物を制作出来た明は、これを早く三人にも見てもらいたいと、リビングに置いてあるスマートフォンを取りに、椅子から立ち上がった。  その時、玄関の鍵が開く音がして、咄嗟に、明は玄関へと行き先を変える。  扉が開くとそこには、黒のチェスターコートに手袋を着けている新が立っていた。寒空の中帰ってきたというのに、背筋は伸びたままで寒さすら感じさせない新を、明はさすがプロのモデルだなと感心しながら出迎えた。 「新! おかえり!」 「ただいま」  新は靴を脱ぎ家に上がると、小走りで駆け寄った明の腰に手を回してキツく抱きしめる。  寒空に冷えた頬が頬に触れると、明も冷えた身体を温めるようにキツく抱きしめ返して、頬を寄せた。  昨日は、お互い仕事と同棲の準備で忙しく会えなかったため、恋人の触り心地の良いすべすべの肌と体温が尚更愛おしい。  新からする薔薇の香りが明の鼻腔に広がる頃には、お互いの身体はほんのり赤く色付いていた。  頬を離して顔を合わせると、欲情して鋭い目付きをした新と目が合い、透き通った瞳の奥に自分が映し出される。このままではいつものようにセックスする流れになってしまうと、明は慌てて目を逸らして、新の顔の前に手のひらをかざした。 「待って! ずっと悩んでたスーツのデザインが出来上がったから、見てほしいんだ」  一瞬不満そうな顔をした新は、明の言葉に瞳孔を開いて驚いてから、興奮気味に鼻息を荒くした。 「前に言ってた、俺達が撮影で着るスーツか! 楽しみにしてたんだ!」  新は明を抱いていた手を離すと、代わりに明の手を握って、細くて長い指を指の間に絡めてくる。それだけのことなのに、くすぐったい感覚が手から身体を駆け抜けていき、新は本当に自分と自分の作品が好きなんだと実感して、下半身が熱くなっていく。  ガッチリと、離れないように手を固定された明は、顔を赤くさせながら、新をデスクまで案内した。 「これなんだけど」  デスクの前に到着して、スケッチブックを渡すと、新はそれを壊れ物を扱うかのように丁寧に両手で受け取った。そこにはデッサン人形が四体描かれており、それぞれ足元には着る人の名前が書かれている。  白のが新、グレーのチェックのが明、デニムブルーのが旭、ダークブルーのが敦のスーツだ。 「凄く素敵だ」  新は食い入るように、スケッチブックを隅から隅まで眺めてから、目を輝かせて明を見ながら微笑む。 「新にそう言われると、自信が湧いてくるよ」  明が微笑み返すと、新はもう一度スケッチブックに視線を戻して、顎に手を当てながら何か考え出した。  もしかして、何かおかしなところがあったのではないか──。  明が不安になりながら新を見つめていると、しばらくして新が口をゆっくりと開いた。 「このスーツは少し敦には勿体無い気がするけどまぁ、今回は許してやろう。それにしてもなんで俺のスーツは白なんだ?」  一瞬安心して気が抜けたが、ニヤニヤと笑いながら鋭い指摘をしてくる新に、明は瞬時に顔を赤くさせた。告白するきっかけになった雑誌のインタビューの記事に載っていた写真の新が、白いスーツ姿だったからと気づいていて聞いているのだとしたら、かなり意地が悪い。 「それは、新は肌が白いし、それに……」 「それに?」  新はスケッチブックを机の上に置きながら、ゆっくりと明に近づいた。そして耳元に唇を近づけると、息を吹きかける。その刺激に全身がぞくりと粟立つ。 「撮影で使ってたスーツも白かったし……」  その発言を聞いた新はニヤニヤと笑いながら、明の耳たぶを肉厚の舌先でペロリと舐めた。  一瞬、熱くて柔らかい、ねっとりとした物が触れただけなのに、耳たぶから全身へと熱が広がっていく。  前に耳に陰茎を擦り付けられてからというもの、さらに耳が敏感になってしまったように感じる。 「明。あのスーツの写真お気に入りだもんな」 「ち、違う。新が俺のこと考えながら撮った写真だから」 「ふぅん。この前、明の部屋に行った時にあの写真枕元に飾ってあったけど」  耳元でクスクスと笑われると、そこまで知られていたのかと、恥ずかしさで一気に身体中が熱くなっていく。きっと新のことだから、その写真をオナニーで使っていることまで、察しがついているに違いない。  でも、素直に認めてしまうのはやはり、恥ずかしい。 「あれは、おやすみ言う用の写真で!」 「寝る前に俺とLINEしておやすみ言ってるのに、写真にまで言うのか?」 「うぅ……」  やっぱり新は勘づいていた。それでいて、写真を何に使っているのか直接聞きたいのだろう。やっぱり意地悪だ。 「ちゃんと言ってくれたら、明の望み通りスーツ着ながら抱いてあげるのにな」  顔を覗き込まれて、透き通ったブラウンの瞳と目線が合わさると、自然と吸い込まれそうになり、素直に言ってしまいそうになる。  しかし、抱いてほしいだなんてそう何度も言えるほど、まだ明は性に関して大胆になれていない。 「今は恥ずかしいから、当日になったら言うよ」  だから、もう少しだけ待ってほしい。  そんな思いを込めて、明は新の瞳を真っ直ぐ見据えて告げると、新は少し残念そうな顔をしたものの、すぐに愛おしそうに明のことを見つめながら、手のひらで頭を優しく撫でてきた。 「楽しみにしてるよ」  新は、それ以上スーツについて追求してくることはなかった。その代わりに頭に置いていた手を腰に移動させていく。 それを察知した明は、身体をくねらせてそれを躱した。 「あっ! そうそう! 冷蔵庫にプリンあるんだった。一緒に食べよう」  そのまま、慌ててリビングへと向かっていく明を見つめながら、新は残念そうにため息を吐く。 「俺はプリンより明の方がいいんだけどな」 「今はダメだよ! それに、引越しの準備する体力も残しておかないといけないし、明日のデートの計画も立てないと」  二人で話あった結果、新の部屋で同棲することに決まり、今夜はその手伝いに新が部屋にくることになっていた。  そうなると、確実に寝る前には体力を使い果たすくらいセックスをすることになる訳で、今は体力を温存しておくべきだと明は考えた。しかし、新は違うようで不満そうに口をへの字に曲げている。 「俺も手伝うし、ジム行って体力もついてきてるし平気だろ。昨日だって仕事で出来なかったし」 「普段から鍛えてる新と俺とじゃ体力が違うの! それに俺は、プリン食べながら新と明日の買い物デートの計画立てたい!」  そっぽを向いて台所へと向かう明の後ろを、新はしゅんと捨てられた子犬のような顔をしながらついていく。  少し、言いすぎたかと思った明は後ろを向いたまま立ち止まって、照れくさそうに人差し指で鼻を擦った。 「膝の上に座るくらいならいいよ」 「やった!」  新は子供のように嬉しそうに笑って、明を後ろから抱きしめた。こうやって素直に喜ぶところが可愛らしい。そして、そんなところが好きだから、新に対して甘くなってしまうのだと明は思った。 「あーん」  新が口の前にスプーンにすくったプリンを突き出すと、膝の上に座っている明は笑顔を浮かべながら差し出されたプリンを口の中に入れる。  すると、ちょうど良い甘さが口内に広がり、甘い物が好きな明はとろけたような笑みを浮かべた。  その様子をじっと観察しながら新は、あることを思い出した。 「こうやって食べさせてると明の誕生日を思い出すな」 「恥ずかしいから、あまり思い出さないで」  運ばれてくるプリンを口の中にいれて咀嚼しながら、明は恥ずかしそうに赤くした顔を伏せる。 「明、凄くいい表情してたのに」 「あまり言うと膝から降りるよ」 「ダメ」  新は、明の身体を自分に引き寄せて後ろから抱きしめながら、肩に顔を乗せて髪に頬擦りをした。 「新。顔近い」 「明の香り、いい匂い」  新は、首筋に顔を埋めてすぅっと香りを吸い込む。その刺激で身体がピクリと反応して力が抜けそうになり、明は慌ててそれを止めさせようと、話題を変えた。 「恥ずかしいからあまり嗅がないでよ。そ、そうだ。明日のデートどうする?」  首筋から顔を離した新は、少し不満そうな顔をしながら明をさらに強く抱きしめた。  すると、新の膨らみかけている硬くて熱い股間が尻の割れ目に自然と当たり、明は頬をさらに赤くさせる。  いつもセックスをしているせいか、無意識に新の陰茎を求めて尻穴がキュンキュンと疼いてしまい、羞恥でどうにかなりそうだ。  明は、抱いてほしい気持ちを堪えながら、誤魔化すように話を切り出した。 「デート、どうするの!」  明が再度問うと、新は抱きしめる力を渋々弱めた。解放された明はホッと胸を撫で下ろしてから、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。 「そうだな。車借りてドライブがてら、どっか遠くのショッピングモールにでも行こうか。ちょうどお揃いのパジャマも買いたかったし」 「いいね。どんなのにしようかな」 「クマ柄とかどうかな?」  クマ柄と聞いて新と出会った時に、パジャマを着させてもらった上、オナニーまで手伝ってもらったことを瞬時に思い出してしまう。  明が顔を真っ赤にして黙っていると、新は悪戯っぽい笑みを浮かべた。  このままでは、新の思惑通りになってしまうと、慌てて頭を横に振って気を逸らす。 「えーっ。さすがにこの年齢でクマ柄はちょっと抵抗があるよ」  明が視線を泳がせていると、新が顔を覗き込んでじっくりと見つめてくる。 「年齢なんて関係ないよ。それに、初めて会った時に着てたクマ柄のパジャマも似合ってたし」  昔のことを思い出しながら、顔を更に赤くさせる明を新は再び強く抱きしめて、お尻にわざと膨らみかけて硬くなった股間を押し当てた。 「あの時、パンツもクマ柄だったよな。どうせならセットで揃えようか。また、俺が履かせてあげる」  耳元に熱い吐息が掛かり、明の耳の形をなぞるように、生温い新の舌先が耳の縁を舐め上げていくと、身体にゾワゾワした刺激が走り、乳首がぷっくりと勃ち上がって硬くなってしまう。  明は止めさせようと慌てて話を逸らした。 「そんな恥ずかしいこと、忘れてよ」 「やだ。一生覚えてるよ。今の明もエッチだけど、あの時の明もまた違ったエロさがあってよかったな」  新が嬉しそうに明の耳を甘噛みすると、明はビクビクと身体を震わせる。 「そうやって、エッチな雰囲気にさせても今はやらないからね」  セックスはしたいけれど、それは今ではないと、明は身体をよじらせて逃げ出そうとした。  しかし、新に逃さないように抱き寄せられて耳たぶを舌先で舐められてしまうと、明は全身から力が抜けて、抵抗出来なくなってしまった。 「はぁっ。でも、明とくっついてたらちんぽ勃ってきちゃったし、明だっておまんこにちんぽ挿れて欲しいでしょ」 「あっ。ちょっと、擦り付けないでっ」  明は、股間に擦り付けられるちんぽの感触に耐えきれず、身体を捻る。  おそらく下着には濡れたシミが出来てしまっているだろう。 「俺が動くからさ。いいだろ。愛しい明のエッチなおまんこに癒してほしいって、さっきからずっとちんぽが熱もってるし」 「んんっ」  お尻に当たっている膨らみが段々と増していき、尻穴もそれに反応してキュンキュンと疼いてしまう。  新は明が大人しくなったのを確認すると、耳にしゃぶりつき、舌で耳のひだを丁寧に舐め回していく。  濡れた耳を舌全体で舐められたり、耳の穴まで舌先を伸ばして挿入されたりすると、頭がぼぉっとしてきて、何も考えられなくなり、発情して息が熱くなっていく。  明は明日のデートに備えてセックスするのを我慢したかったのに、新はそれを許してくれない。  それどころか、耳元でねだってくる始末だ。 「明もズボン膨らんできちゃってるよ。触って欲しい?」  新は耳から舌を離すと、そのまま耳に軽く歯を立てながら、ズボン越しに明の内腿を人差し指でなぞる。  もどかしい快感が身体を走り抜け、下半身が重くなっていく。 「あっ、んっ♡ 触って……っ♡」  明は尻に新の股間を押し付けると、誘うように大きく股を開いた。

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