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第1話

5月12日夜の10時、俺は自室に入って鍵をかけた。  今日は俺の誕生日だった。数時間前、ダイニングテーブルにホットプレートを出して、家族と一緒に俺の好物のお好み焼きを食べた。  豚肉と餅とチーズと大葉とシラスが入っている「陸也スペシャル」だ。シラスが入っているのは、俺の身長がせめてもう五センチ伸びてほしいという母心からだったことを、今日知った。 「でももう陸也も18歳だしね。悪あがきかしら」 と苦笑する母に、 「なに言ってんの。男は二十歳まで身長伸びるわよ」と珍しく姉のフォローが入った。  父は仕事の帰りに、駅前のケーキ屋でホールケーキを買ってきてくれた。  古風なバタークリームのケーキに『りくや君お誕生日おめでとう』のチョコプレート。  正直、ものすごく恥ずかしい。俺を知ってる奴あそこでバイトしてなかったよな、と一瞬記憶をさらった。  ケーキにろうそくを立てて吹き消した。両親にとって、末っ子の俺は、十八になった今も幼い子供のままなのだろう。  幸せだな、と思った。  家族にも友達にも恵まれて。  これ以上を望んだら、きっとバチがあたるんだろうな、と思った。  だから……雅人と別れ別れになるのは、ちょうどいいくらいの試練だ。  神様の公平な采配なのかもしれないと思った。

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