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第2話

 雅人は、小学校からの幼馴染だ。俺は小学校から私立大学付属の小学校に電車で通っていた。雅人は隣の駅近くに住んでいて、毎日一緒に通学していた。  中学生になり、高校生になり、俺は当然このまま一緒の大学に通うんだと思っていた。理系で頭のいい雅人とは進む学部は違うだろう。それでも、キャンパスではちょくちょく顔を合わせ、一緒に通学するんだと思い込んでいた。  小学校の頃は、周囲にも「双子みたい」と言われていたのに、いつのまにか雅人の身長は俺を追い越していた。顔つきや嗜好も大人っぽくなっていった。  ちなみにお互い、彼女ができたことはない。  いや、俺はあったか。  俺は高校二年のときに一度告白されたことがあった。一つ年上の女子の先輩だった。体育祭実行委員で一緒だったのだ 。  初めて人に好きになってもらえた、と有頂天になった。手探りでおつきあいを始めたものの……結局男同士の遊びを優先させてしまい、フラれることになった。  俺が未熟で身勝手だったし、相手には申し訳なかったと思う。  雅人は……どうだったんだろう。いたのだろうか。彼女とか、好きだった人、とか。  そう考えると、呼吸が速くなって、胃のあたりがぎゅっとなる。  食べたばかりのごちそうを吐くのは忍びなくて、とにかく俺は気持ちを落ち着かせようと深呼吸をする。深く息吸って、自分の部屋の天井を見あげてゆっくり吐く。すると、今度は視界が歪んできた。 「いないよな。いないだろ……」  そうつぶやく。  いるわけない。毎日のように俺とつるんで帰ってて、彼女なんているわけないんだ。  自分に言い聞かせる。  雅人にしてみれば、弟みたいにつきまとう俺に遠慮して他の人間関係をつくれなかった、ということなのかもしれない。  雅人は優しいから。  俺はずっと自分の幸せしか見えてなかったし、それが当たり前に続くと思っていた。  子供だった。

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