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第7話

 今の俺には雅人の気持ちがわからないんだよ。  俺が友達でいてよかった?  ずっと隣にいて迷惑じゃなかった?  俺との毎日を、雅人も楽しんでた?  本当はもう解放してほしかった?  雅人に尋ねたいことばかりだ。なのに本人はもう傍にはいない。  そしてもうひとつ、気がついてしまった。  俺が期待していたのは、本当はこういうお友達関係じゃなかったってことに。  ただただ一緒にいて遊んで。「ツレです」「マブです」みたいな子供同士の関係じゃなくて。将来のことをどう考えているか真剣に話し合ったり、学校が変わっても会い続けようとお互い努力しあったり……そういう間柄にステップアップしたかったんだ。  なのに、俺はよく考えずにずっとふざけあって、子供同士の関係で安心しようとしていた。  その結果がこれなんだろう。  各駅停車がホームに滑り込んできて、俺は相沢と別れた。   ※   ※   ※  電車はすいていた。座席も空いていたが、俺はいつもの習慣でドア近くに立った。  窓の外を眺めながら考えていた。  相沢と話して、少し自分の気持ちの整理がついた気がした。  俺は今まで、雅人が好きすぎて、雅人ひとりに依存していたんだな。  だから、これからは俺も雅人以外の人間関係を作ればいいんだ。  そうすれば、雅人に執着してこんなに悩まなくて済む。  自立している人間とは、あちこちに依存先があるものなのだと、Xのつぶやきでも見かけたことがある。依存先を俺も増やしてみればいいのかも。  とはいえ、すでに三年生で学校での人間関係はもうだいたい固定化されている。だったら――。  俺は電車の窓に貼られたシールの広告をみつめた。ピンクのハートマークがついた広告だ。 『あなたの幸せはここから!ハッピー☆ゲートで理想の彼氏に出会っちゃお♡』  胸元の広くあいた服を着た女性タレントと目が合う。  ちょうど一週間後は俺の十八歳の誕生日だった。  俺は決めた。  一週間後、俺はマッチングアプリで、彼氏か彼女の候補に出会う  そして雅人と平和に距離をとる。  どうだよ? これぞ大人の対応ってものじゃないか?  そう考えたら、急に心が落ち着いてきた。  これが「開き直る」ってやつなのかもしれない。一回どん底まで落ち込んだら、今度は肝がすわったような気持ちになった。  俺は雅人から自立してみせるぞ。  未練を断ち切って、大人のゲートをくぐるんだ。  気合を入れるために今夜は、好物のお好み焼きを作ろう。家族の分も。  そんなことを考えた。  久しぶりに食欲が戻ってきたような気がしていた。

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