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第11話

夜中にどうしても何か食べたくなる時がある。 ストックも底をつき、何一つない。 そんな時はこっそりと寮を抜け出し、コンビニに走る。季節柄、肉まんやらあんまんが出てきた今日この頃。余計にコンビニに行くのが好きになってしまっている。 とりあえず誘惑に負けないように強い心を持ちつつ、ストック出来るものと、飲みものと肉まんを買って寮に向かう。別に未成年でもないから気にする必要はなくても、なんとなく時間が気になってしまう。丁度日付が変わる、そんなことを通り掛かった公園の時計にぼんやりと視線をやり、思っていたところ視界の端で何かが見えた。赤い小さな光だ。 「あれは……」 視力は良いから見えてしまう。 相手も俺が見ているのに気がついたのか、やや気まずそうな顔で俺を見ている。 無視するわけにもいかないから、相手のほうに行けば、やはりそれは光瑠さんで、手にはぼんやりとした火が灯された煙草があった。 「……煙草、吸うんですね」 「うん、たまにね」 慣れた手つきで、それを口元に運び、一拍置いた後に白い煙が吐き出される。少し、つん、突き出された唇が可愛いなぁと思う。 「……そんなに見つめられると照れる」 「いや、なんか新鮮だなぁ、って」 普段ほわほわと笑ってる光瑠さんの大人な一面。 忘れがちではあるけれど、光瑠さんは誰よりも大人だ。いつも周りを見て、色々と気を配ってくれる人。ユニットは違えども、そういうところが俺は…… 「だから、そんなに見つめられると照れるってば」 どうやらまた見つめてしまっていたらしい。 なんだろ、この目が離せない感じ。 光瑠さんと煙草って不釣り合いなようで似合ってる。ギャップ、なんだろうか。 吐き出された煙を見て、なんとも言えない気持ちになる。 「いつから吸ってるんですか?」 「20歳になった時かな……やっぱり喫煙所でコミュニケーション取る人もいたし。それから、そうだなぁ……なんとなく、かな……?」 そう言ってふわふわと笑う。 惚れた欲目もあると思うんだけど、凄くそれが可愛いと思う。 「美味いんですか?」 「んー……美味しくはない、かな? でも気分転換とかにはなるかも。イライラした時とか」 「……えっ、イライラすることあるんですか?」 「……たまに?」 「意外」 「そう? 結構あ……いや、あんまりないか」 光瑠さんが怒ったり声を荒げている姿を一度も見たことない。いつも笑ってて、穏やかな雰囲気で掴み所がない。まるで吐き出される煙のような人だ。目の前に見えるのに、すぐに消えてしまって匂いだけ残る。 その匂いを探して、探すうちに深みにハマってしまう。俺もそのうちの一人だからよくわかる。 「宗介くん?」 ちりちりと小さくなった煙草を光瑠さんから奪い取る。間接キスだとか思ったけれど、半ば衝動的だったから後には引けない。 光瑠さんの真似して、口元に手を当てて、息を吸い込む。口の中に苦味とそれに相反した清涼感が広がる。それを吐き出せば白い煙と舌に残る苦味でむせこんでしまう。 「げほっ、げほっ……」 「む、無理しちゃダメだよ」 光瑠さんが煙草を奪い返そうとするけれど、そのままもう一度吸い込み、その煙を光瑠さんに吹きかけてしまう。 「……えっと、宗介くん、もしかして意味わかっててやってる……?」 「何のことですか?」 「あ、いや、うん。なんでもない」 奪い返されて、携帯灰皿の中には消えていった吸殻。気の所為でなければ光瑠さんの顔が赤い。 煙草の煙を吹きかける意味……? 調べようとスマホを取り出してみたが、光瑠さんが大慌てで逃げようとするから腕を掴んで引き止めた。 光瑠さんの腕を掴んだまま意味を調べて…… ああ、そういうことか。 「あー……意味合い的には強ち間違いではないかと」 「……宗介くんのえっち」 こんな反応をしてくれると言うことは、脈ありと思っても良さそうだ。 「それにしても、宗介くんは煙草似合うね」 なんて誤魔化すように光瑠さんは呟くから、今はそれで良いかと納得させた。明日から猛アタックだな……そう心に決めた冬の始まりの日。

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