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第24話

 彼女の着飾った姿を見るとイライラして仕方がない。それに――。 「そんなの証人にはならないわ。それに、いくら仕事が忙しくてもノーウォルトの人間として舞踏会に出ないなんていけないわよ。足だって、いつまでも車椅子に甘えてたらダンスが出来なくなっちゃう。ただでさえアシェルはダンスが苦手なんだから、ちゃんと立って練習しないと。明日お休みなんでしょう? 先生をよんであげるから、ちゃんとダンスの練習をして」  ――彼女の、現実を見ない言葉が何よりも嫌いだ。 「先生を呼ぶ必要はありません。呼ばれたところで先生が困るでしょうから」  舞踏会が貴族として生きるのに必要なことであるのはアシェルとてわかっている。それを否定する気は無いが、アシェルにダンスを求められても困るのだ。ダンスどころか、この足は立ち上がることさえも、もう出来ないというのに。

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