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第108話

「公爵、どうか弟をお許しください。弟は少しひねくれた物言いをしますが、そう悪い子ではないのです」  アシェルのあまりの態度に焦ったのか、ジーノが慌てて取り成すように口を開く。しかしルイは元々気にしていないのだ。 「大丈夫ですよ。アシェル殿が悪い子どころか、素直でお優しいことなど、よく存じていますから」  まるで幼い頃から見知っているかのような口ぶりにアシェルは再び眉間に皺を寄せるが、何かを言う前にパシッとフィアナが自分の手に扇を打ち付けた音が響いて口をつぐむ。 「アシェルお兄さま、これで何度目かわかりませんが、往生際が悪いですわよ。ロランヴィエル公、ごめんなさいね。兄に代わって私が謝りますわ。それに、正直なところ今回の件はラージェンと公爵に判断を仰いだ方が一番無難だと思いますの」  そう言ってフィアナはジーノを促し、メリッサからの手紙をラージェンとルイに見せる。それに視線を落とした二人は、僅かではあるものの血の繋がりがあるのだと納得できるほど同じように苦笑した。

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