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第152話
「もう予定はありませんから、ゆっくり眠ってください。大丈夫、側にいますから」
優しく寝台に横たえてやれば、アシェルはホッと小さく息をついた。よほど疲れていたのだろう、ルイの言葉に何を返すこともなくゆっくりと重たげに瞼を閉じる。もう一度深く息をついて、アシェルは規則正しい寝息を零した。
アシェルがグッスリ眠っているのを見て、ルイは手にしたままのモノクルをサイドテーブルに置いた。その時、隠されているような、でも見つけてほしいというような、なんとも微妙に端を覗かせた小さな紙が赤い表紙の本の下に敷かれていた。抜き取って見れば、そこにはアシェルの文字で〝じぃ 田舎の屋敷 派遣協会に連絡 ベリルとマルタ〟と書かれていた。それが何を示すのか理解して、ルイはクシャリと握りつぶし、ポケットの中に仕舞いこむ。
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