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第160話

「そんなに必死になって隠す必要もないと思うけど」  すべてを拒絶するように、己を守るようにギュッときつく瞼を閉ざして縮こまっていたルイの耳に、予想していたものとは違う、随分とのんびりした声が聞こえた。蔑むでもなく、だからといって心にもない慰めでもない、本当に、心底わからないといった風のそれに、ルイは思わず「ぇ……」と小さな声を零した。  隣にいる少年は、何を言っている? 「気になるなら止めはしないけど、むしろ今はフードを脱いでいた方が良いよ」  あまりの驚きに震えすら止まったルイに気づいていないのか、アシェルはもっと早く言ってあげればよかったね、なんてのんびりと呟く。そんな彼にルイは思わず顔を上げて、ぎこちなくその大きく見開かれた目を向けた。 「なん、で……」  人々は皆、この髪と瞳を嫌う。悪魔だと言って遠ざけ、蔑み、そして少し離れてクスクスと嗤う。こちらにその声が聞こえているとか、ルイがどう思うかなど関係ない。継母もルイを厭い、父でさえ息子を遠ざけた。この髪と瞳が愛されたのは、母が生きていた時だけ。母亡き今、この髪と瞳は誰からも愛されることのないものだ。なのに――、 「え? だって今日はすごく暑いから、日向ならともかく、日陰ではフードを脱いだ方が涼しいでしょう? ちゃんとこまめにお水を飲むようにフィアナに注意していたくらいだし」  なのに、相変わらずアシェルはどこかズレた応えばかりを紡ぐ。

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