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第242話
「それよりも、アシェル。私は今から城に戻りますが、よければアシェルも一緒にいかがですか? 王妃殿下が、少し時間が空いたので会いたいと仰っているのですが……。どうやら、アシェルが可愛がるエルピスに会ってみたいようですよ?」
隠すものでもないからと、ルイがラージェンに雑談のひとつとして話したことがフィアナの耳にも伝わったらしい。どうやら待ち構えていたらしいフィアナに王の執務室を出た瞬間捕まったルイは、エルピスと一緒にアシェルを城へ連れてきてほしいと強請られたのだ。
命令ではなく、ただのお願い。拒否することも容易いが、妹のお願いに弱いアシェルは仕方のない子だと苦笑しながらも頷いた。
「ちょうどエリクがハーネスを用意してくれたから、それを着けて行こうか。この屋敷ならともかく、城で迷子になってしまったらエルは帰ってこられないだろうし、探すのも一苦労になるだろうから」
それに、お転婆なエルは広く煌びやかな城に行ったらはしゃぎまわってしまいそうだ。ロランヴィエルの屋敷に置かれている調度品を倒し、花瓶などを割ってしまってもまだ許されるだろうが、同じように城の物を割ってしまってはいけない。
「エル、少しだけ我慢してくれ」
エリクがピンク色の可愛らしいハーネスをつけている間、アシェルは気を逸らすようにエルピスの顎下をくすぐり、頭を撫でている。エルピスも楽しそうにアシェルにじゃれつき、その柔らかな手をモノクルに伸ばした。そんな悪戯っ子の手を苦笑しながら掴む。
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