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第287話
技術大国と呼ばれるバーチェラをも凌ぐ大国・オルシア。その繁栄を象徴するように明るく賑やかな王都の中央に輝く巨大な城はあった。
隙なく城門を護る兵士たちに、しかしルイは臆することなく突き進む。勢いよく駆けてくる二頭の馬に兵士たちは警戒を露わにして槍や剣を構えた。
兵士の前で手綱を引き、愛馬が嘶く。
「私はバーチェラより参った公爵、ルイ・フォン・ロランヴィエルと申す者。火急の要件にて、オルシア王に謁見賜りたいッ!」
兵士に見えるようラージェンから預かった書状を差し出す。そこにあるバーチェラ王家の紋に兵士たちが目を見開いた時、城門が開かれ奥から白い隊服を纏った美しい青年がやって来た。
「お出迎えが遅くなり申し訳ございません。私は近衛隊長リュシアン・カルネスと申します。お急ぎと思いますので、このまま馬で城までお越しください。先導は僭越ながら私が」
おそらくオルシア王・アルフレッドからある程度の事情は聞いているのだろうリュシアンと名乗った近衛隊長は、挨拶もそこそこにヒラリと馬に跨った。
「感謝申し上げます」
ルイの言葉に小さく礼をして、リュシアンは馬の腹を蹴って駆けだした。それにルイとベリエルも続く。
流石は大国オルシアと言うべきか、バーチェラの城も広いがオルシアの城は更に広いようで城門から城までは想像していたよりも遠かった。なるほど、リュシアンが気を遣って馬での移動を促すはずだと胸の内で納得し、チラとアシェルに視線を向ける。
雨季ではないオルシアの領土に入ったとはいえ、ヒュトゥスレイはジワジワとアシェルを蝕み続けている。発作に苦しんだ身体はもはや限界なのだろう、アシェルは白い肌を更に白くして眠り続けている。その吐息があまりにか細くて、ルイは何度も恐怖におしつぶされそうになった。
だが、ようやくオルシアにたどり着いた。ルイが知る限り、唯一の希望。
「アシェル……」
強くその身体を抱きしめる。ひたすら駆けていたリュシアンが振り返り、正面を示した。
「こちらです!」
目の前に広がる美しい城。顔を上げた時、その正面に青いオルシアの衣装を纏った青年が見えた。
銀の髪に、サファイヤの髪飾り。腰には半分に割られた佩玉。彼がオルシア王妃――シェリダンその人だ。
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