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第79話 銀狐、目合う 其の一 ※

「──ひ」    耳元でそんな物騒なことを囁かれて、(こう)の身体は『怖れ』という名の期待の疼きに身を竦ませた。  晧、と名前を呼ばれて、甘えるかのように鼻先を耳に擦り付けられる。毛並みの気持ち良さを充分に堪能したのか、白霆(はくてい)の舌が耳裏をじっくりと舐め上げた。   「……っ、みみ……っ、あ」    銀灰黒の毛並みが次第にしっとりと濡れていく。やがて耳の内側の耳介を熱い舌の這う(さま)に、晧は今までに上げたことのないような甘い艶声を上げた。   「……んんっ、あ……っ、ん」 「耳、弱いんですね」   「そ、こで……あ、しゃべるな……ぁ」 「可愛らしい」   「うるさ……っ、ん」    晧の狐耳を責めながらも、はだけた衣着の内側を白霆の大きな手が、肌の感触を楽しむかのように撫で(さす)る。  やがて辿り着いた指先が乳暈(にゅううん)を、ゆっくりとまあるく(なぞ)った。   「……あっ」    焦らすような手付きに気を取られている内に、白霆が晧の耳に牙を甘く立てる。  同時にすでに硬くなった昂りを、布越しに花芯に擦り付けるように腰を使われて、晧は逃げるように身体を捩らせた。   「──ひう……っ、ん」 「こう……逃げないで」 「だって、こんな……」  「気持ちいい?」    耳元で吐息混じりに囁かれる、白霆の声すらも堪らなくて晧は無言で頷いた。  そんな晧の様子に白霆がくすりと笑う。   「やはり可愛らしい」 「だから……、っ、かわいいって言うな……っ!」 「まだ何もしてないのにこんなに敏感で、この先が思いやられます」 「だって……お前の触れるところ……っ、全部、きもちい……」 「──っ」      途端に白霆の息を詰める様子が、耳介を通じて伝わってくる。  その須臾(しゅゆ)。   「あ」    耳からぴちゃりと濡れた音がしたと思いきや、ぬめりととしたものが耳孔に入ってくる感触がした。  舌だ。   「──あっ、あっんだめ、待っ……や、やぁ……っ!」    竜の長い舌が中にじっくりと侵入し、耳孔を掻き混ぜるように動く。  やがて舌を抜き差しする動作に変われば、気が遠くなるような、得も言われぬ悦楽に襲われた。   「んんっ……はくて……!」    耳孔を犯す卑猥な音が頭の中で響いている。それが堪らなく気持ち良くて、晧は無意識の内に腰を白霆の昂りに擦り付けた。   『あまり煽らないで下さい、晧。我慢が出来なくなる』    耳孔を責めていて話せない白霆が、思念を使って直接脳に語り掛けてくる。  淫靡な水音の中に響く白霆の、欲を伴った掠れた声。  それが自分の頭の中で繰り広げられている様に、まるで質の良い酒に酔ったような気分になる。   「我慢……するなよ。俺を……っ、啼かせて、たくさん……っん、名前、呼ばせるんだろ……う……?」             

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