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第92話 銀狐、目合う 其の十四 ※

「こう……」    耳に吹き込まれる、より一段と低く欲に掠れた声に、どくりと大きく胸が鳴る。  白霆(はくてい)が正面から晧を見た。  劣情の焔を宿した灰銀の目が、欲にまみれて見下ろしている。普段は穏やかな印象のある男が、自分に対して乱れて興奮している姿は、(こう)にとって堪らない光景だった。  突き刺すような灰銀の瞳に、形の良い薄い唇から洩れる     荒々しい息と、竜の唸り声。  幼竜の時から知っている年下の男の、獰猛な雄の顔に感じ入る。    ああ、自分を屈服させ、食らい尽くす雄だ。  自分の胎内(なか)をこれから蹂躙する雄なのだ。  白霆が胎内を慣れさせる為に止まってくれているというのに、胎内の媚肉はきゅうきゅうと雄蕊を締め付けて、奥へ奥へと誘い込むような動きをする。制御の効かなくなっていく自身の身体が恥ずかしくて堪らない。    もっと欲しいのだと。  動いて、と言っているようなものだ。   「胎内(ここ)、欲しがってますね。晧……可愛い……こう……」    白霆の熱い手が晧の頬を撫でる。  先程まで可愛いなんて言うなと反発していたはずなのに、やけに脳内に響いて仕方ない。嬉しいなどと思う自分が信じられなかった。  可愛いと言われながら落とされる接吻(くちづけ)。  獰猛な欲の熱を含みながらも、愛しいのだと言わんばかりの白蜜の様な瞳に見つめられて、心から溢れてくる感情に晧は胸がいっぱいになる。   「はく、てい……」    晧が呼べば、はい……と真摯な応えが返ってきた。   「どうやら俺は……っ、お前が俺のことを欲しがって、獣のような顔をしているのが……好きみたいだ」 「……っ」 「逃げないで、お前を受け入れて良かった。苦しいけど、この苦しさが……愛おしい。こんなに熱くて、幸せな気分になるなんて……思いもしかなった」 「晧……こう……!」    欲に掠れた声で白霆が晧の名前を呼びながら、鼻梁に唇に何度も接吻を落とした。その度に胎内が切なく、白霆の雄蕊を締め付けるのを嫌でも自覚する。   「私も幸せです。私を……受け入れて下さり、ありがとうございます。晧」

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