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第28話、真面目な話は邪魔が入るもの

「お前は役立たずなんかじゃない。俺をこうして助けてくれるのはいつもランベルトだ。昔からそうだっただろ。家族もランベルトの事をちゃんと考えてくれる優しい人たちだったんだよ。それにランベルトは家族や周囲の意志を継いでこうして立派に国も立て直した。新しい医療魔法も作った。あれも今後の医療にとても役に立つ。ランベルトが役立たずな訳がない。俺が保証する。お前は偉業を成し遂げた凄い男だよ。ランベルトはもっと誇りに思ってもいいと思う。俺にとってお前は昔からの憧れで一番大切な人だ。仮に誰も必要としなくても俺にはお前が必要だよ。そんな風に言うな」 「レオン……」 「それに俺はお前を嫌った事もないよ。これからも嫌いにならない。あの時はごめんな、ランベルト。俺、本当は二年の時にはもうお前が好きだったよ。契約に抵触してお前の側にいるのが辛かったから、俺は自分が楽な方に逃げたんだ。お前の事、傷付けてるなんて考えてもみなかった。本当の意味で嫌った事もない。愛してるよ。これからもずっとランベルトだけを愛してる」  ランベルトの顔を上げさせて、誓うように口付ける。正面から視線が絡んで破顔してみせると、照れたように微笑み返された。  それからまた何度も口付ける。 「「あーてるー」」 「こら、めっ!」  双子とエスポワールの声が聞こえてきて、ハッと横を向いた。 「レオンとパパなかよししてるから、めっ!」 「「めっ」」  エスポワールの言葉を聞いて双子が頷いていた。  途端に恥ずかしくなってきて、ランベルトと顔を見合わせるなり笑ってしまった。 「そういえば、うちの赤い皇子にも名前をつけなきゃだな」  ランベルトを見ながら言った。 「うん。それにしてもコイツらも大活躍だったね。いつの間にあんな魔法使えるようになったの?」  不思議そうにランベルトが首を傾げる。 「ゆかにまるいおえかきしたの。ねんねしてるときね、レオンがわるいのにつかまってたの。ばあばにいったらね、おしえてくれたの」  エスポワールが眦を下げて笑う。こういう笑い方もランベルトにそっくりだった。 「丸いってもしかして魔法陣かな。エスあれ描けたの? マジで⁉︎ 古代文字だよ。天才じゃんエス!」  ランベルトに抱き上げられ、エスポワールがキャラキャラ笑っていた。 「そか。エスは不思議な夢たくさん見るもんな。お前らも助けてくれてありがと」 「ティアとフィーも、てつだったよ。エスにあわせてふたりでけっかいつくれるの」  視線を向けると揃ったように二人でウンウンと頷いている。 「「マジで? うちの子たち天才過ぎん?」」  パレンティアとフィーリアを腕の中に抱え上げ、頬にキスをおくった。 「おい、そこの親バカども入るぞー。さっきからめっちゃノックしても反応ないから勝手に入ったわ」  呆れたようなケミルの声に視線を上げる。点滴と輸血パックの交換に来たらしい。  医療魔法師が取り替えてくれるのを視線で追っていると、気まずかったのか頭を下げられた。 「今回、肝心な時にお役に立てずに申し訳ありませんでした」 「いえ。いつも助けられてますよ。無事で安心しました。ありがとうございます」 「恐縮です」  もう一度頭を下げられ、処置が終わると医療魔法師は部屋を出て行った。  ***  まともに動けるようになってから、ランベルトと一緒に不死鳥の我が子を見に行った。  その子には、理想という意味でイデアルと名付けて、他の子よりだいぶ小さな体を腕に抱いた。 「うわ、小さいな」 「不死鳥てこうなんだね。俺潰しそうで怖い」  しかし、問題はその後から起こるようになった。  同じ精霊族でも不死鳥はまた成長具合が異なるらしい。困った事によく鳥の姿になったりとコロコロと姿も変わる。 「ああ、不死鳥はこんなもんだよ」  サーシャの言葉に胸を撫で下ろす。  エスポワールの時のようにリミッターを自力で解除したのかと焦ったのだが違ったみたいだ。  イデアルにかけたリミッターはあくまで甦りの能力と発火能力だけだったとも説明される。  サーシャが居てくれなかったら、どうしていいのか分からなくなっているとこだった。  不死鳥は腹の中にいる時から本当に気まぐれだ。  半年もすると双子と大差ない大きさにまで成長し、また、精神的……心の成長は不死鳥の方が早くて、ついていけずに困惑したのはレオンの方だった。  舌っ足らずながらも、もう言葉をある程度自由に喋るのだから驚きだ。  先に産まれたエスポワールや双子の方がのんびり成長していっている。 「レオン様、またイデアル皇子が!」  女官が鳥になったイデアルを追いかけているのが分かり、ため息をついた。  ——何度目だろう……これ。  空を舞ってイデアルを追いかける。 「こーら、イデアル戻って来い!」 「やだ! レオンがこればいいだろ」  また部屋中のシーツを爪で引き裂いて遊んでいたイデアルを追いかけていると、鳥のまま外に逃げたので慌てて追いかけた。 「はい、残念」  ランベルトに教えて貰った転移魔法で先回りしてイデアルを捕まえる。 「それずりぃー!」 「いつもお世話してくれる人たちにごめんなさいしよう?」 「それがしごとなんだからいいだろ」  不貞腐れたように言われてしまい苦笑した。 「そういう問題じゃない。お前には感謝の気持ちが足りないんだ。あの人たちがいなかったらお前一人じゃ何も出来ないだろ」  肩に乗せて無理矢理連れ帰って、頭を下げさせた。 「はあ、疲れた。イデアルはヤンチャ過ぎる」  寝室に戻ってベッドの上に転がる。  ——ランベルト、寂しがって泣いてないかな。  ランベルトは数年に一回開催される各種族を集めた首脳会談に出かけていて、数日前から国をあけている。帰るのは明日だ。  本当に仕事が出来ているのか怪しいくらいの頻度……十五分おきくらいにメッセージは入ってくるが、こっちがそれどころではなかった。  部屋に備えつけられているシャワールームに入ってのんびりと全身を洗っていく。  服は着ずに腰にタオルだけを巻いてベッドまで歩いて行くと、突然背後から口元を覆われた。 「随分と唆られる出迎えだねレオン。もしかして俺が居ない時はいつもそんなに無防備なの?」 「ランベルト? 首脳会談は終わったのか?」 「終わったよ。レオン、あまり返事くれないから早く帰って来ちゃった」  ランベルトの事だからちゃんとやるべきことはやっていそうなので、あえて突っ込まなかった。 「それでレオンはそんな格好をして誰を誘ってるの?」  低音で発せられた声にピクリと身を震わせる。 「いや、誰も誘ってないんだけど……。ていうか俺に釣られる奴なんてランベルトくらいだぞ」  パチクリ、とランベルトが目を瞬きする。 「気が付かれてもいなかったとか……あいつらに同情しちゃうね。俺、レオンと関係持てて良かったよ」  何の事か聞こうとしていると、抱きつかれた拍子に擦れてタオルが落ちた。 「おい待てランベルト。腰になんか当たってる」 「違うよ。当たってるんじゃなくて当ててるの」  首脳会談に出掛ける前に数日間会えないからと散々交わった身としては、暫くセックスなしでもいいくらいだった。  何度も騎乗位で動かされ、もう自分で動けないと泣きが入ったのは記憶に新しい。 「ランベルト、行く前にたくさんしただろ?」 「うん。でも帰ってきたからまたシたい。泣きそうになりながら、自分で腰振って感じるレオン可愛かった」  顔が火照るのが分かり下を向く。 「俺もシャワー浴びたいからレオンももう一回一緒に入ろ?」  断る間もなく、ズルズルとシャワールームに連れて行かれる。仕方ないのでランベルトを座らせて全身洗っていく。ふと、悪戯心が芽生えた。

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